GRAPEVINEとは何者なのか? メジャ
ーデビュー25周年を迎えてもなお進化
し続けるバンドのツアー初日公演を振
り返る

GRAPEVINE SPRING TOUR

2022.3.17 中野サンプラザホール
GRAPEVINEとは何者なのか。今年、メジャーデビュー25周年を迎えるバンドに今さら何をと思いながら、逆に25周年という節目だからこそ、GRAPEVINEというバンドの正体について、改めて考えてみてもいいんじゃないか。単純明快なツアータイトルに溜飲が下がる『SPRING TOUR』の初日となる中野サンプラザ公演を見ながら、そんなことを思った。いや、終始、観客を圧倒した演奏に考えさせられたと言うべきか。
GRAPEVINEのライブのオープニングには、毎回、してやられたと思うのだけれど、この日も、無言のままセッティングを始めたメンバー5人の様子にメンバーを迎えた観客の拍手が鳴りやんで生まれた、緊張をはらんだ静けさの中、バンドが1曲目に披露したのが、これをライブの1曲目に持ってくるかと思わせる「虎を放つ」だったのだから、観客に挑もうとするバンドの姿勢は明らかだった。
後述するように、田中曰く「特に名目もない」カジュアルなツアーと思わせ、逆にそういうツアーだからこそ、とことんやってやろうとメンバー達は果たして考えていたのか、いなかったのか。
とまれ、緊張の糸がピーンと張り詰めた「虎を放つ」のオルタナティブともプログレッシブとも言えるバンドの演奏に飲み込まれ、息を止めてステージを凝視していた観客の緊張を、今度は解くように、ここ最近はライブの後半戦や終盤の流れに弾みをつけるために演奏することが多かったソウルフルでアッパーな「Alright」をいきなり2曲目に持ってきた時点で、おや?と感じた観客は少なくなかったんじゃないか。その予感どおり、この日、金色の緞帳に縁どられた中野サンプラザのステージでGRAPEVINEが演奏したのは、最新アルバム『新しい果実』からの5曲も交えながら、どちらかと言うと、レア曲が大半を占める新旧の全23曲だった。
「特に名目もないから(=リリースに紐づかないから)、何が飛び出すやら。知らん曲ばかり。全部、新曲です(もちろんジョークだ。念のため)。後で、ネットで検索してください。基本、喋りはウソしか言いません(笑)」
前半戦が終わったタイミングで、田中和将(Vo/Gt)もそんなふうに軽口を叩きながらセットリストに言及していたから、本人達も少なからず珍しいセトリという意識はあったと思うのだが、逆に言えば、そこに名目があったんじゃないかと想像する。
「GRAPEVINEです。久しぶり。最近、毎年、中野に通ってる。(中野サンプラザが)なくなる、なくなると聞いてから、3年くらい通ってる(笑)。非常に光栄です。マスクの光景にも慣れました。みなさんの顔がわかるし、私なんて、みなさんの声が聴こえる。いい演奏したら、いい拍手お願いします。マスクの下は笑顔でお願いします」(田中)
そんな挨拶を挟みながら、亀井亨(Dr)が鳴らした頭打ちのビートが観客の気持ちを煽ったロックンロールナンバー「EVIL EYE」、金戸覚(Ba)のグルーヴィーなベースが腰に来るGRAPEVINE流のソウルナンバー「目覚ましはいつも鳴りやまない」と繋げ、バンドは観客の体を揺らしていった。そして、そこから一転、「Metamorphose」と「雪解け」の、ぐっとテンポを落とした演奏に、じわっと熱を込め、観客の気持ちをぐいっと引き付けると、さらに一転、再び8ビートのロックンロール「ジュブナイル」に繋げ、観客の気持ちを一気に解放させる。
西川弘剛(Gt)がチョーキングで思いっきりギターを泣かせたところにカウンターパンチを食らわせるように金戸が跳ねるフレーズをぶつけ、演奏の熱を上げるというバンドサウンドの醍醐味をたっぷりと味わわせた「ジュブナイル」は、前半戦のハイライトだったと言ってもいい。
その余韻が残る中、田中が奏でるちょっとおどけた調子のギターリフで繋げた「BABEL」からのブロックは、ソウルミュージックの影響が感じられる曲が演奏の手数が増え、やがてカオティックでフリーキーになるその「BABEL」、ダビーな演奏の中で西川の幻惑的なギタープレイとワウを踏んで、音を揺らした金戸のベースプレイが際立った「Neo Burlesque」、そしてエディットしたような音源のサウンドを5人で再現しつつ、メンバー全員で荘厳なハーモニーを重ねたオルタナソウルの「ねずみ浄土」の3曲で彼らが持つアバンギャルドな魅力をアピールする。
そこから70年代ロックのマニアと思しき一面が垣間見えるトラッドフォーキーで、ハードロッキンで、サイケデリックな「KINGDOM COME」、AORとも言える曲調を演奏しながら、亀井のドラムプレイをはじめ、劇伴のようなアレンジで聴かせた「世界が変わるにつれて」(この曲で金戸はアップライトベースを弾いた)、オチサビを含め、J-POPの雛型と言えるオーソドックスな曲構成を踏襲しながら、メランコリックなメロディの魅力を印象づけたギターロックの「アナザーワールド」と、バンドが観客を煽ることもせず、ただ粛々と、1曲1曲にしっかりと熱を込めつつ演奏する曲の数々を聴きながら、バンドのイメージを追って、迷宮にさまよいこんでいった筆者の頭に浮かんだのが、冒頭に書いた疑問だった。
GRAPEVINEとは何者なのか。
無闇矢鱈に音色の数を増やさず、曲によってはテルミンも操る高野勲(Key)を含む5人が奏でるGRAPEVINEサウンドを打ち出しているから、いつしか当たり前のことだと思って、迂闊にも意識することはあまりなかったが、リリースに紐づかないセトリということで、いつも以上に、そういう魅力が際立ったのかもしれない。
「何が飛び出すやら」(田中)
ひょっとしたら、この日、GRAPEVINEは観客を圧倒するだけではなく、翻弄することも楽しんでいたのかもしれない。確かに何度かそんな瞬間が見受けられたが、「喋りはウソしか言わない(笑)」と冗談を言った田中は、「一つだけほんとのことを言うと、我々、今年デビューして25周年なんです」とも言った。
なるほど。25周年という節目を迎え、リリースに紐づかないセトリ作りができるこの機会に自分達がやってきたことを振り返っておこうと考えたのかもしれない。今回のツアーを開催するにあたっては、セトリを作るために過去もアルバムを聴き直したり、曲によっては久しぶりに合わせたりということもあったんじゃないか。当たり前だと考え、無意識にやっていることも改めて意識してみると、そこに新たな発見があるかもしれない。
そんなことをメンバー達が考えたかどうかはさておき、「これからも末永くお願いします」と田中が挨拶してからの後半戦は、フォークっぽい歌をロックンロールに乗せた「Silverado」、ポストパンクなロックナンバー「Shame」、ダンスグルーブも持つサイケデリックなロックンロール「阿」、オーソドックスなアレンジで歌謡メロディを引き立て、ストレートに良い歌と思わせたバラードの「さみだれ」、西川がトレモロカッティングで轟音を鳴らしたロックナンバー「その未来」と、1曲ごとにこれまでさまざまな曲作りに挑んできたバンドの歩みを印象づけていった。そんなセトリの最後を最新アルバム『新しい果実』からの先行シングルだった「Gifted」で締めくくったのは、時間軸の上を紆余曲折したセトリの流れを、ここからの未来に繋げるという意味で象徴的だったと思う。
「アンコール、サンサュー! よし。あと30万曲ぐらいあるからやるぞ!」(田中)
アンコールを求める鳴りやまない手拍子に応え、バンドは追加で、哀愁のメロディに観客が酔いしれた「スロウ」他計4曲を披露。この日も「その先はわからへん!」と田中は今後の活動について明言を避けたが、「基本、ウソしか言わない」彼らのことだ。25周年のアニバーサリーイヤーとなる今年の活動については、もうすでにいろいろ計画を立てているに違いない。
田中が言う“どラスト”を締めくくったのは、バンドのオプティミズムを印象づけるロックナンバー「ふれていたい」。サビの直前に手を挙げた田中に応え、観客が手を振り、GRAPEVINEのライブには珍しい(?)アンセミックな光景が目の前に広がった。
GRAPEVINEとは何者なのか。メジャーデビューから25周年を迎えてもなお、そんなことを思わせるのは、彼らが常に新しいことに挑戦しながら進化し続けている証拠。レア曲が大半を占めるセトリに改めてそんなことを確信した2時間だった。
取材・文=山口智男 撮影=藤井拓

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