湯浅政明監督はフランスへ向かう飛行機で「タコピーの原罪」を読んでいた!

湯浅政明監督はフランスへ向かう飛行機で「タコピーの原罪」を読んでいた!

「犬王」アングレーム国際漫画祭で明
かされた貴重な裏話 湯浅政明監督が
“アニメ化したい作品”も告白

湯浅政明監督はフランスへ向かう飛行機で「タコピーの原罪」を読んでいた!(c)2021 “INU-OH” Film Partners 湯浅政明監督の劇場アニメ「犬王」が、フランスで開催された「アングレーム国際漫画祭」で上映。3月18日(現地時間)にプレミア上映、Q&Aイベント、19日(現地時間)にトークイベント「マンガが動き出す時」が開催され、湯浅監督が現地でファンと交流を深めた。
 「犬王」は、能楽師・犬王の一生を描いた古川日出男氏の小説「平家物語 犬王の巻」が原作となるミュージカルアニメ。漫画家の松本大洋がキャラクター原案、「逃げるは恥だが役に立つ」の野木亜紀子が脚本を務め、犬王役をロックバンド「女王蜂」ボーカルのアヴちゃん、犬王とバディを組む琵琶法師・友魚(ともな)役を森山未來が演じている。
(c)2021 “INU-OH” Film Partners(c)2021 “INU-OH” Film Partners 「アングレーム国際漫画祭」は、1974年よりフランス南西部アングレーム市で開催されており、「漫画のカンヌ」とも呼ばれる欧州最大級の漫画イベント。「犬王」はプレミア上映に加え、アート展も開催。キャラクター原案を務めた松本による原画が世界で初めて展示された。なお、日本映画でプレミア上映とアート展を併催するのは初の試みだ。
アート展のポスタービジュアル(c)2021 “INU-OH” Film Partnersアート展を巡る湯浅政明監督(c)2021 “INU-OH” Film Partnersアート展を巡る湯浅政明監督(c)2021 “INU-OH” Film Partners 18日(現地時間)、Cinema CGRで開催されたプレミア上映では、400人が入場できる会場が満席に。上映中は、まるで“犬王や友魚を囲む民衆”のように曲に合わせて拍手や足でリズムをとっている観客も多く見受けられ、エンドロールでは大きな拍手と歓声が長く続いた。Q&Aイベントでは、観客からの質問が殺到。約1時間のイベント時間では足りないほどだ。湯浅監督は、その質問ひとつひとつに丁寧に回答していく。製作の裏話だけでなく、湯浅監督が普段からSNSに投稿している動画についての話題や、アニメーション制作の技術的な質問も飛び出した。
 この熱気あふれるやりとりの中から、印象的なものをピックアップしよう。
プレミア上映、Q&Aイベントの様子(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問1「手塚治虫の『どろろ』からインスピレーションを受けたように思ったが、いかがですか?」
湯浅監督「古川日出男さんの書かれた原作小説が、平家物語を伝えた人の話として『平家物語 犬王の巻』を作られたんですね。その中に『どろろ』に一見似ているかのような設定もあります。呪いによって異形のものになっている。でも、『どろろ』の場合は妖怪を倒していくと少しずつ体が戻っていく。だが、『犬王』で違うのは、犬王が生き残ったのは平家の亡霊が助けてくれて、その亡霊を彼が喜ばせることで彼のカタチが変わっていくんです。だけど彼が求めているのは体のカタチが変わっていくことではなくて、人前の舞台で踊ることが彼の目的だったんですね。だから最後の姿が犬王の求めている姿だと思っています」
質問2「様々なタイプの音楽が出てきて、それぞれの感情に合わせて語られていますが、なぜヒップホップ的な音楽を使用したのでしょうか? また、感情ごとにダンスの種類が違う点も聞きたいです」
湯浅監督「当時の人たちがびっくりしたであろう音楽を鳴らしたという設定で、でも当時の普通の音楽は私たちは知らないので、もっと極端に変わった曲を設定することが必要でした。この室町時代というのはあまり資料が残っていなくて、どういう時代だったかがちょっと分かりづらいんです。今残ってる資料から過去を知ろうとしても本当に情報が少ないんです。オーパーツのように世界にもっといろんな人がいて、新しいアイデアがあって、いろんなことをしていたはずだけど、歴史に残っているのはすごくわずかのことしかない。何万人の人が何百年、何千年といたら、ヒップホップのようなことも誰かがやったはずだと僕は思います。彼らが新しいことを始めたときにいろんなダンスをしています。『雨に唄えば』みたいな雨を使ったダンスもあるし、シャッフルダンスのような足を使ったダンスもある、ヒップホップのようなダンスもある。バレエのような踊りもあるし、体操のような動き、カール・ルイスの幅跳びのようなジャンプもある。そういう、今自分たちが知っている歴史の中に、いろんなことがあったかもしれないという可能性をもっていろんなダンスを入れています」
プレミア上映、Q&Aイベントの様子(c)2021 “INU-OH” Film Partnersプレミア上映、Q&Aイベントの様子(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問3「監督のTwitterで『犬王』にも出てくるダンスなどのgifアニメを上げていますが、ご自身のために作っているんですか? それとも仕事のためですか?」
湯浅監督「自分が好きなものを描いていたり、仕事中に描いたラフを仕上げてるものもあったり、勉強のためにいろんなダンスを見ながら描いたものもあります」
質問4「ビジュアル面や音楽面ではどんな人の影響を受けましたか?」
湯浅監督「ビジュアルは松本大洋さんの影響受けています。人々が新しい音楽を聴いて熱狂するところはビートルズが出てきた時の印象を参考にしました。曲がない中でムービーを作らなくてはならなかったので、自分の好きな曲をイメージしてムービーを作っています。それに合わせて、作られた音楽になっています。ビートルズやクイーン、エルビス・プレスリー、ディープ・パープル、ジミ・ヘンドリックスなどイメージした曲はいろいろあり、そこに歌詞が歌われているイメージでムービーを作って、それに曲がついています」
プレミア上映、Q&Aイベントの様子(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問5「原作をアニメ化する際に、どこまでの自由度でアニメ化しますか? ご自身の中でここまではやってはいけないなどの制限を設けるのか、それとも、もっと自由なのでしょうか」
湯浅監督「ストーリー的には制限は設けないです。表現的に自分で考える中であまりやり過ぎないようには考えます。原作があるときに一番大事にするのは、自分の読んだ感じです。本を読んだ感じ。たぶん、本質は本の、紙の上にあるわけではなくて、読んだ人の中にあるものだと思っているので、自分の中に読んで出来たものを一番大切にしています。この映画も、今日観た皆さんが感じたこと、皆さんの中に残ったものを大事にしてほしいです」
プレミア上映、Q&Aイベントの様子(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問6「新しい物語やこれまでに存在しない物語を語るということは難しい、ということを伝える作品だと感じました。監督はどう思われますか?」
湯浅監督「この話は、歴史に残るような話ではなくて、本当は物語はたくさんある、ということを語っている作品でもあります。昔の人の消えた話をまた語るというのもひとつのテーマですけど、共に現代に生きている僕らにもたくさんのストーリーがあって、できるだけ誰かのストーリーをみんなが知った方がいいな、と思うところがテーマになってます。それが最後のシーンに込めた思いですね」
 19日(現地時間)に行われたトークイベント「マンガが動き出す時」では、立ち見で参加する観客も詰め掛け、約200人の観客が会場に集った。影響を受けた作品、最近注目している漫画についても語った湯浅監督。最後の質問コーナーでは、プレミア上映と同様に多くの質問が飛び出した。ここからはトークイベントで明かされた裏話、観客からの質問に対する答えを紹介していく。
トークイベント「マンガが動き出す時」の様子(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問A「映画『犬王』のキャラクターデザインに、『鉄コン筋クリート』『Sunny』『竹光侍』などでフランスでも人気の漫画家・松本大洋氏を起用した理由をお聞かせください。『犬王』を制作するにあたって、松本氏の絵にどんなことを期待しましたか?」
湯浅監督「原作の『平家物語 犬王の巻』の表紙の絵を松本大洋さんが描かれていたこともありますが、僕はいつも松本さんと仕事がしたいと思っていたんです。『犬王』に必要な、リアルなテイストと存在感、人間の奥深い印象、伸びやかなフォルム、それでいてひょうきんな感じも混ぜて描いて頂ける松本さんのデザインが、作品にも、自分の感性にも合うと思いました」
犬王(松本大洋)(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問B「松本氏とどのようにコラボレーションされたのでしょうか。脚本執筆中から参加してもらったのでしょうか」
湯浅監督「キャラクター原案の制作については、脚本制作と同時進行でした。松本さんと一緒に能を見に行ったりもしました。松本さんは古川さん訳の『平家物語』も『平家物語 犬王の巻』の絵も描かれていたので、『犬王』の内容も『平家物語』の内容も把握されていて、まずはキャラクター全体を自由に描いてもらいました。そして、主人公の犬王と友魚はアニメーションとして自分が動かしたい形を松本さんと相談しながら形にしていきました」
湯浅監督「(アングレーム国際漫画祭の)展示を見て頂くと分かりますが、キャラクター原案のデザインに加えて、シーンのイメージボードのようなものも描いてもらいました。『犬王の父が女性にモテる』のような松本さんのメモを基にキャラクター設定にも反映していきました」
アート展(c)2021 “INU-OH” Film Partnersアート展(c)2021 “INU-OH” Film Partners古い面(湯浅政明監督)(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問C「湯浅監督は子ども時代、漫画をよく読んでいましたか? マンガを読むことで、絵を描きたい、アニメーションを作りたいという気持ちを持っていたのでしょうか」
湯浅監督「小さい頃は姉が買ってる少女漫画を読んでいました。少女漫画に出てくるような、目がキラキラした男の子がかっこいいと思って、そういう漫画を描いていました」
質問D「影響を受けた、もしくはご自身にとって大事な漫画や漫画家の方を教えて下さい」
湯浅監督「姉の少女漫画以外だと、子どもの頃はクラスで流行っている漫画を読んでいました。アストロ球団とか、ちょっと変わった漫画が好きでしたね。他にはわたなべまさこさんの『聖ロザリンド』という恐怖漫画が好きでした。『聖ロザリンド』は『オーメン』のような話で、可愛い女の子がエグいことをしていきます」
質問E「そもそも漫画やアニメにはいつ頃、どうやって興味を持ったんですか?」
湯浅監督「子ども時代、アニメの絵が好きで、白黒テレビのアニメで見たものを幼稚園で絵に描いて、人気者になって味をしめました(笑)。当時、アニメはテレビ漫画とも言われていて、一般の人はアニメと漫画の差があまり分かっていなかったんですね。僕も姉の漫画を読んだりして、自分も描きたいと思っていました。僕が12歳の時にアニメブームが起こって、アニメーターという仕事を知り、アニメが作りたいんだなと気づきました」
質問F「原作のないオリジナル作品もあれば、漫画原作、小説原作もともにアニメ化されていますね。漫画の場合は絵が描かれているのでベースとなるビジュアルがありますが、小説の場合は言葉だけを頼りに絵を構築していく必要があると思いますが、どちらの方がご自身に合っていると思いますか」
湯浅監督「原作があるものをアニメ化するときに楽しみなのは、原作ファンがアニメを観たときに『ここは違う』『ここは同じ』と感じることがある部分です。小説や漫画を読む本質というのは、描かれているその文字や絵そのものじゃなく、読んだ人の中にあると思うんです。原作をアニメ化するときには、そこに描かれている文字や絵をそのまま拾うのではなく、読んだ人の感覚を映像にしたいと思っています。また、今後オリジナル作品を作るチャンスがあるならば、原作の代わりに骨子となるものを先に作りたいので、制作に沢山時間が欲しいですね」
トークイベント「マンガが動き出す時」の様子(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問G「『マインド・ゲーム』は、ロビン西氏による同名漫画の映画化ですが、コマ割りが独特で、読んでいてもとても衝撃を受けました。アニメ化にあたって、苦労されたところはありますか」
湯浅監督「『マインド・ゲーム』をアニメ化にする時、アニメは原作の漫画よりも、ちょっと地に足をつけた感じにしようと思いました。原作は『なんでもできる!』という話だけど、映画の方は『大概のことはできるが、できなくてもそれにトライすることが楽しい』というお話になっていると思います。原作の漫画はすごく勢いが合って上手い絵なんです。漫画と違って、アニメはチームで作るので、基準となる絵が必要になるのですが、『マインド・ゲーム』は漫画の世界観を表現するために、逆にアニメーターがコントロール出来ない雑多な感じを出したくて、出来るだけ沢山の要素を入れようと思いました。雑多なものの集まりだけど、世界は一つにまとまっている、それが主人公が見えている世界ということを表現しています」
質問H「『ピンポン THE ANIMATION』では、原作の漫画の線とコマ割りにかなり忠実に作られていらっしゃいますが、特に卓球のシーンの動きに関して、原作にはない発想がたくさん見受けられます。漫画における時間や空間を、アニメーションで表現するとき、どういった考えて制作されていますか」
湯浅監督「『ピンポン』が難しいのは作品が完成されすぎているところです。なので、漫画を意識しすぎないに気を付けていました。松本さんが当初漫画にとある女の子を出すつもりだったと聞いて、アニメではあったかもしれないストーリーとして登場させました。漫画とアニメの一番の違いは、漫画がコマが大きかったり小さかったり色んな方向を向いていたりするのに対して、アニメの場合はフレームやバンドが決まっている点です。できるだけ松本さんのコマを生かしながらアニメでも表現するように努力しました。あとは、自分が漫画を読んで分からないところは分かりやすくして、背景(ストーリーや設定)を立体的に組んでいきました。絵的にも立体的にすることで、作品全体が立体的な仕上がりになったかと思います。また卓球のシーンに関しては、時代を経て卓球のルールが変わったことが大きかったです。アニメは現代のお話として見せたかったので、新ルールに合わせて変えています」
質問I「(『DEVILMAN crybaby』について)永井豪氏の原作は、当時のモラルに合わせ直接的な表現が控えられていますが、湯浅監督の『DEVILMAN crybaby』では、暴力やセックスの描写がより生々しく描かれています。時代の変化やそれと共に変わる人々の価値観に合わせたアップデートだったのでしょうか」
湯浅監督「自分が子供時代に『デビルマン』を読んだときの衝撃を、大人になった自分がアニメを見て感じるにはどうしたらいいのか考えました。時代的にも現代で起こってるお話にしないと、永井さんの漫画を読んだときの衝撃は表現できないと思ったんです。監督として考えるのはキャラクター単体のデザインよりも、画面の中でどう映るかを重視しています。『犬王』でもキャラクターの身なりそのものよりも、どう着こなしているか、どう動くかでキャラクターが決まると思って制作しました」
質問J「漫画を原作としたアニメを監督する際、原作者の漫画家とはどういったコミュニケーションを取っていますか」
湯浅監督「たまたま僕がアニメ化している原作の漫画家さんはまかせてくれる方が多く、有難いと思っています。漫画を読んで分からない部分で、原作の意図知りたいときは、聞いたりしていました。これまであまりがっつりと原作者の方と一緒になってアニメを制作したことはないですが、今後チャンスがあれば松本大洋さんとガッツリ一緒に制作してみたいですね」
トークイベント「マンガが動き出す時」の様子(c)2021 “INU-OH” Film Partners質問K「最近読んだ漫画はありますか」
湯浅監督「大人になってからは、人から聞いたものは読んだりしています。最近は『漫画沼』というテレビ番組でオススメされていた漫画を読んだりもしていますね。直近読んだ漫画だと、『銀河の死なない子供たちへ』やフランスに来る飛行機で読んだ『タコピーの原罪』が面白かったです」
質問L「いつかアニメ化したいと思うマンガはありますか」
湯浅監督「松本さんの『花男』が大好きなのでアニメ化してみたいですね。他には、アニメ『平家物語』のキャラクター原案を担当されている高野文子さんのファンで、『るきさん』や『棒がいっぽん』もアニメ化してみたいです。諸星大二郎さんの『暗黒神話』もやってみたいです」
 「犬王」は、5月28日から全国公開。

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