Laura day romanceが、2ndアルバム『
roman candles|憧憬蝋燭』で見せる
「素顔」ーー「100%幸せな気持ちに
はしたくない」理由とは

群を抜くポップセンスで注目を集め、緻密に作り上げられた楽曲はアートや映画のようと形容される4人組・Laura day romance。アルバム『farewell your town』から約2年の時を経て、3月16日(水)に2ndアルバム『roman candles|憧憬蝋燭』をリリースした。そこで今回は井上花月(Vo)と 鈴木迅(G)に、今作についてインタビュー。井上が「過去の作品を聴いてた人はびっくりしちゃうかもしれない」と語る、メンバーの性格が露わとなった新たなグッドメロディとは?
Laura day romance
――今年バンドは結成5周年ですが、お祝いイベントなどはないんですね。
鈴木迅(G)​:確かに(笑)。
井上花月(Vo):(結成が)いつなのかもフワッとしていて(笑)。
――では自然発生的にスタートを?
鈴木:ほかのバンドよりは自然発生的かも。
――プロは目指していなかった?
井上:最初から就職活動はしない感じでした(笑)。
鈴木:そうだね。プロ志向っちゃプロ志向でしたね。
――結成時はどんなバントにしようと?
鈴木:プロフィールに「ツインボーカルバンド」とあるんですけど、始めた時はシュガー・ベイブ山下達郎大貫妙子らが在籍したバンド。活動は1973~1976年)みたいに男女両方がバーンと歌えてハーモニーがあって、その当時のいい音楽を今の海外っぽい音でやりたいというぼんやりとしたビジョンがあったんです。けど、気づいたら今の感じになってました。
――実は、ツインボーカルのことに触れていいのか心配していました(笑)。今作『roman candles|憧憬蝋燭』では井上さんのメインボーカルのみなので。
鈴木:全然、触れて大丈夫です(笑)!
井上:でも、プロフィールをどうするかマジで悩んでるんですよね(笑)。初期はわりとツインボーカルの曲があるんですけど、最近はあまりなくて。
鈴木:ま、そのままで大丈夫な気もします。
――5年の間に方向性に変化があったんですか?
鈴木:自分のやりたい音楽をわりとスムーズにやれてきたかなと。こうやっていけばやりたいことが形になるって感じが、前作ぐらいからあって、今回、『roman candles|憧憬蝋燭』で(やりたい形に)より忠実にできるようになったと思いますね。
――大きな方向転換はなさそうですね。ツインボーカルに関しては?
鈴木:少なくともこのアルバムに関しては、コンセプトに合わせて井上のボーカルのみになった感じですね。
――ちなみにもうひとりのボーカルである川島健太朗さん(G.Vo)はどんな反応を?
鈴木:もう、「ついて行きます!」みたいな(笑)。
井上:なんか最近、「俺、ついてくんで!」というスタンスなんです、彼。理由は私たちも全然わかんないです。ナゾです(笑)。
――仲がよさそう(笑)。
井上:いいですね。
鈴木:いいと思います。

Laura day romance 井上花月

――さて『roman candles|憧憬蝋燭』の話を。まずは今作のテーマを教えてください。
鈴木:生活のなかにおける死生観みたいなものが全体を通したテーマですね。今までの作品は言うなればフィクションのような……(『farewell your town』のテーマである)「架空の街」もそうですけど、少し幻想というか。
井上:空想に飛ばすじゃないけど、現実にはない違う国の話みたいなイメージ。
鈴木:そういう軽さが好きな部分だったんですけど、今回はより生活のなかで聴けるとか、生活のなかにもたらせるとか、そんな距離感を目指して作っていて。制作時にいろいろ考えたこと……死生観が根底にあります。
――それは前作からの約2年間がコロナ禍だったことも影響していますか?
鈴木:それもあると思います。
井上:当たり前が当たり前じゃなくなることで、こんなに簡単にコロッといくんだなって。あと死の存在が身近になったことで、月並みですけど平和や当たり前のありがたみを感じた期間でしたね。
――空想が楽しめたのは平和だったからかも?
鈴木:言ってしまえば、余裕があったみたいなことだと思います。
――不安や不寛容が広がり、余裕がなくなるなかで、現実に向き合って声を上げたいと思うようになりましたか? というのは、やりたかったのは誤解を恐れず誰かを喚起するような曲を書くこと、というような鈴木さんのコメントを以前見たので。
鈴木:それは「fever」(CD限定収録曲)を先行配信した時のことですね。今はすぐ音楽をカテゴライズするクセみたいなのがあって、例えばギターがカーンッと鳴ってたらギターロック。で、それを聴いた瞬間に自分が聴く音楽じゃないと思う人が一定数いるなと感じていて。それで「fever」はポップでエネルギーのある曲だったこともあって、そういう誤解(「fever」の音楽性だけで判断されること)を恐れず自分からパッと出たものを音源にした、ということを言いました。出てきたものを嘘偽りなく忠実に再現しようという意味で、誤解を恐れずにと。それは1stアルバムの丁寧な作風に近くて、今回の2ndもその感じですね。やりたいことをめちゃ素直にやって、自分の今のフィーリングに合ってるものを……誰かに求められてやるんじゃなく、のびのびとやらせてもらったのが今作です。
――そのいきいきした感じが、死生観の生の側面に通じているんでしょうか?
鈴木:いや、やりたいことは楽曲のテイストだったりですね。死生観はそれとは別で、根底にあるもの。作曲と作詞が分離してるとしたら、歌詞の方が死生観に寄ってる印象です。
Laura day romance  鈴木迅
――なるほど。ちなみに井上さんの過去のコメントも見たのですが、今後やりたい音楽について聞かれた時、「若さを取り戻す」と答えていました。
井上:あ~(笑)。それは『farewell your town』を作った時に、年相応じゃないみたいなことを……。
鈴木:言われましたね(笑)。
井上:1stアルバムだけど衝動とかが見えなくて、「なぜこんなに丁寧に作り込まれてるんだ?」みたいなことを言ってもらったんで、「じゃあ(今後は)若さ、取り戻します?」みたいなテンションです。そんなに老けてはいない気がしてたんですけどね(笑)。
――今作で若さは取り戻せました?
井上:取り戻せました。「happyend|幸せな結末」(11曲目)、「fever」、「東京の夜」(ともにCD限定収録曲)のシングル3曲で7割は取り戻したかなと。若さの部分はそこで出して、アルバムは歳相応なんじゃないかな。そうでもないですか?
鈴木:いい意味で相応だと思う。
――そう思います。ただ、ほかの同年代のバンドに比べると抑え気味な印象はあるかも。
井上:ま、バンドらしい、いわゆる激しい感じはないので。でも音楽がすごく聴きやすかったり、心地よかったりするからと言って、情熱がないわけじゃなく。内に秘めてるものも見えるんじゃないかなと思うので、それは聴いてもらえればわかりますね。
――納得。と言いつつ、2曲目「well well | ええと、うん」の高ぶる歌声、好きです。あと個人的に今作では井上さんのブレスも満喫。ご自身はボーカル、楽しめました?
井上:今までの曲より、今回の曲たちは全然、歌いやすくて。パッと録ってOKになることが多かったですね。
――なぜでしょう?
井上:ささやく感じの静かな歌い方がすごく自分に合ってて。今までは声を張ってというか、ちゃんと声を出す感じの曲が多かったんですけど、今回のアルバムに関しては、弾き語りで静かに歌ってる感じで、でもバンドにのせる……みたいな。その絶妙なところをいく歌い方が本当に自分に合ってましたね。なので、自分で聴いてても心地いいし、歌っていても楽しいし、いいことしかなかったです。そう、「つらい」があまりなかった。楽しかった。
――まさに耳心地抜群! なのに、ありそうな多幸感があまりない(笑)。時々聴こえる歪む音や気になるリフレイン、裏腹で意味深な言葉などがその理由かなと思いますが、「そんな簡単に幸せにはしない!」という意図もありますか?
鈴木:めっちゃあると思います(笑)。
井上:あるね。ひっかかりみたいなのはわりと作ってるかも。
鈴木:(聴くと)幸せな気持ちになれるみたいなことを言われがちなんですけど(笑)、でも100%幸せな気持ちにはしたくないというか、100%幸せにしてくれる曲はほかの人たちがいくらでも作っているから、それは俺らがやるべきことではないなと正直思っていて。そういう意味では、「なぜこれを選んだんだろう?」というアイデアというか……不協っぽく聴こえたりとか、ノイズっぽかったりとか、急に歪んだりというのは、大事なバンドのひとつのキャラクターで、それが今回強まってるかもとは思いますね。
井上:一番、私たちの素の性格が出てる作品かも。
鈴木:そうかもしれない。
Laura day romance 井上花月
――それは一筋縄ではいかない、いくつも階層がある思考の結果によるものですよね。そのイメージはメンバー内でどうやって共有しているんですか?
井上:アレンジは迅くん(鈴木)が全部考えてて、コーラスは私が考えたりもしてるんですけど……。
鈴木:例えばコーラスワークなら、ここで気持ち悪いのが欲しいとか(井上に)オーダーをしたりして。それはほかのメンバーにもそうで、普通のリズムで叩かないでほしいとか、流れ過ぎないで多幸感あり過ぎないようにコントロールしてる部分はあると思いますね。
――そこでほかのメンバーから疑問や反論がないということは4人の感性が似ているということですね。
井上:確かに。でも結構ドラマーは、「なんで?」みたいな顔をしてるんですけどね(笑)。
鈴木:「なんでこんなことをするんですか?」という質問はされますけど、「こういうことです」と言って、完成までいけば納得させられるという(笑)。でも、かっちゃん(井上)はそういうのないね。
――そこで川島さんも納得して、「ついて行きます!」となるわけですね。
鈴木:それもあると思います。最終的にはいいものになる。
井上:でも、そうなんですよ。メンバー全員、多幸感……みたいなバンドじゃないんですよ。そこのギャップもあって、今回のアルバムは一番、私たちの名刺的な作品というか、性格が出てるなと思います。
――そんな名刺的な作品ですが、ジャケットに写るのがご本人ではないというのがトリッキー(笑)。草原に立つ3人を遠くからとらえた写真です。
井上:妹なんです(笑)。
――モデルでもなかったのですね!
井上:モデルさんだとちょっと(被写体同士の)関係性が希薄かなと思ったんです。迅君からアイデアとして3人の男女の画像をもらって見た時に、「これいい!」と思い、3人の男女でいこうっとなったんですけど、妹と親友とその彼の3人が仲よくて、めっちゃいい関係だなとずっと思っていたので、出てもらったらいいなと。
鈴木:(アイデアとして見せた)『突然炎のごとく』(1962年のフランス長編映画)のジャケットがすごく魅力的で。
井上:関係性がわからないっていうか。
鈴木:女1・男1・男1という比率がいいなと。関係がパッと見ではわかんない。不確定にしておくという。
井上:関係性って流動的なことが本来普通だし、名前が付かない関係性のすばらしさ。
Laura day romance  鈴木迅
――そういう理由だったんですね。さて、今作のリリースツアーが5月に。先日、井上さんは、今作は再現が難しいと話していましたね。
井上:本当に再現しようとしたらコーラスが5人ぐらい必要で、無理なんですよね(笑)。
鈴木:ベースはもちろん、おそらく鍵盤とギターのサポートメンバーを入れてという演奏になると思うので、なんかこう頭をひねって、アルバムの自由な音をみんなで割り振ってやろうかなと思ってます。
井上:必死だよね。
――自身初のワンマンツアーですが緊張しますか?
井上:楽しみの方がやっぱり大きい。でも歌い方的にどうしようかとずっと考えてて。演奏に負けそうで……。
鈴木:ネガティブ(笑)。
――レコーディングでは楽しく歌えたのに(笑)。
井上:録音ならよかったけど、「これ、会場で聴いたらどうなるんだろう? 聴こえないんじゃないか?」とかいろいろ考えてしまっています。マジなこと言うと、そういうとこはちょっと心配ですけど……どうにかします!(笑)
Laura day romance
取材・文=服田昌子 撮影=高村直希

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