文学作品からインスピレーションを得
て、パーカッショニスト・はたけやま
裕の音楽と画家・蒲原元のアニメーシ
ョンが観客の無限の想像力を刺激する
『音語りの色』

パーカッショニスト・はたけやま裕の華麗なパフォーマンスに魅せられ、名だたるアーティストをサポートするコンサート、彼女自らが主催するライブに足を運んでいた。しかし、それらとは一味違う、彼女のもう一つのアーティスティックな魅力を堪能できるのがライフワークとしている「音語りの色」だ。「銀河鉄道の夜」「星の王子さま」など文学作品からインスピレーションを得て作曲した音楽と、異国の風と憂いを秘めた作風の画家・蒲原元が制作したアニメーションがコラボレーションするシリーズ。観客は想像力を刺激され、物語世界に深く踏み入っていく。一昨年は各地でのツアーも予定されていたが、コロナ禍のために断念。しかしその空白の時間は「音語りの色」をより深化させた。再始動となる福岡市公演では、芥川龍之介「蜘蛛の糸」を取り上げる。なんと人気落語家・柳家喬太郎が同じく「蜘蛛の糸」を題材にした新作落語も披露。落語好きのはたけやま裕ならではの取り合わせが実現する。公演に向けて、はたけやまと蒲原に対談してもらった。
――まずはお二人の出会いから教えていただけますか?
はたけやま 元さんとのコラボは10年以上になります。
蒲原 僕は裕さんの演奏する姿を見て、本当に驚いたんですよ。こんなすごいパーカッショニストがいるんだと度肝を抜かれまして、いつか一緒に何かできたらと思っていたんです。それが数年たち、偶然の出会いを経て、ライブペインティングのようなもので即興的にコラボする企画がスタートしました。でも裕さんはすごいプレイをするのに、画家の立場からすると納得いかないものばかりで、壁にどんどん頭をぶつける日々(苦笑)。音楽では、静かなところから盛り上がっていくのに10秒で済むところが、絵では10分くらいかかる。全然ついていけない。どうやったらいいコラボレーションができるかを探して探して、今に至るんです。
蒲原元
はたけやま 最初はアーティスティックなところからスタートしたんですけど、だんだん作品をじっくりつくりたいという方向にシフトしていったんですよね。私は文学作品を読んで曲をつくるということを始めました。それも最初は、いろいろな音が入っている電子ドラムを二つ並べて、そこに入っている音色だけで宮沢賢治の「よだかの星」を表現するみたいな。元さんには今よりずっと抽象的な絵で一緒に「よだかの星」を表現をしてもらったんです。賢治の作品をいろいろ手がける中で、わかりやすいアニメーションをつけてもらうようになり、さらに言葉を伝えたいと思うようになった。特に「星の王子さま」では、「本当に大切なものは目に見えない」とかいっぱいある素敵な言葉を伝えたくて、朗読を入れたんです。どんどん形を変えて、成長しながらここまで来ました。
蒲原 途中、僕がつくったアニメーションに演奏を合わせてもらうということもやりました。でも合わせるのが難しい、合わないんです。それで出た答えが、アニメーション側から演奏に合わせていくやり方。今やっている、小分けしたアニメーションを出していくという手法です。
はたけやま つまり完成したアニメーションを流しているわけではないんです。ミュージシャンもライブで演奏するとテンポが変わったり、アドリブで長くなったりするんですよね。それに合うように、会場で元さんがVJとして合わせてくれているんです。だからこちらも安心して演奏に没頭できる。

音語りの色「銀河鉄道の夜 〜星めぐりの歌〜」
音語りの色「銀河鉄道の夜〜プレシオスの鎖〜」

蒲原 ミュージシャンの方って、実は意外と気持ちが乗ってくると、速くなったりテンポが変わるんです。でもそれはお客さまにとっても、心地よい速さ。だから僕は演奏に合わせて再生速度を変えたり、ループさせたり、止めたりしながら合わせていく。もうこれはリアルタイムじゃないとできないんです。
 裕さんは文学少女で、文学に造詣が深いんです。これは普段のミュージシャンとしての活動からはあまり出てこない部分。せっかく組むのであれば、そこを掘り下げて、違う形のものをやったほうが面白いだろうと、パッケージにしたんです。「よし、やるぞ」となったところでコロナになって活動はできなかったけど、作品はどんどんできています。
はたけやま コロナ禍で動きづらくなったことで、逆に、二人の活動を本格的に始動させようということで、今までの活動にタイトルをつけました。それが「音語りの色」です。

■音楽とアニメーション、文学を題材にした「せつなさ」が魅力のコラボ
――お互いの表現のどんなところに魅力を感じていらっしゃるか教えてください。
はたけやま 元さん自身が時がゆっくり流れる感じのオーラを持っている方だから、作品にもそれが表れているんです。元さんの描く人は後ろ姿が多いんですけど、ものすごく語ってくる。
蒲原 裕さんのパーカッショニストとして猛々しさと、静かな文学的なせつなさみたいなもの、対照的な表現がどちらも素晴らしいんです。「音語りの色」でやったもので言えば、文章にしてわずか2、3行くらいの雨のシーンを拾い、そこから広げて、ある一つの世界をつくり上げてしまうんですよ。そういうところがすごい好きですね。
はたけやま 元さんの作品と私の作品を合わせると「せつない」という言葉がぴったり(笑)。まさにコラボすることで音語りの世界が完成するんです。
サン=テグジュペリ『星の王子さま』より(画・蒲原元)
宮沢賢治「虔十公園林」より(画・蒲原元)
――お二人で打ち合わせするときはどんなことを話されるんですか? 
蒲原 お酒を飲みながらですけど、今はどんなことを考えているのか、どんなことを憂いているのかといった話をして、作品を決めていくんですね。裕さんは曲をつくるときは一気に素晴らしいものが出てくるんですけど、ハマらないと何も出てこない。そういう意味では、どういう作品をやるかを間違えないように、二人で話すことが意外と大事なんですよね。
はたけやま 私にとっては普遍的なメッセージがあるかどうかがすごく大事な要素。それを伝えたいと思うみたいなんです。宮沢賢治もテーマがすごくいっぱいありますよね。
蒲原 僕はいろいろなスケッチを形にしていくんですよ。たとえば、ここは、この方向から風がふわっと吹く感じにしたいといった漠然としたものから始めます。そこから水彩などで色をつけて、パソコン上に取り込んで、部分的に自分の油彩画から抜き出した素材などを加えながら構築していったりします。

■「蜘蛛の糸」を選んだ理由は何年かしたらわかってくると思う
――「蜘蛛の糸」はどんなイメージで登場したんですか?
蒲原 ラインナップとしては唐突ですもんね。
はたけやま これまで宮沢賢治を中心につくっていて、その後に「星の王子さま」をやりました。ある種似たテイストでした。その次に何をやろうか考えたときに、私の中で音楽にできそうな予感を持てた作品は意外に少なくて、「蜘蛛の糸」はその中の一つでした。いくつか候補を挙げたら、元さんも『「蜘蛛の糸」がいいなあ』とおっしゃったんです。
蒲原 この活動をずっと続けて、いろいろな作品をつくり続ける中で、いつか点が線になっていくような気がしているんですよ。それが何かの拍子に時代に合ったりするので、なぜ「蜘蛛の糸」になったかは何年か後にわかるのかもしれません。ただ、裕さんが作曲した地獄は、生き生きとした音で表現された世界。すごい躍動感があるんですよ。
はたけやま あははは! 以前に狂言師の方のお芝居に即興で音楽をつけていくということをしていたんです。そのときの感覚がよみがえってきて、地獄の緊迫感は韓国のチルチェを使いたいと思って。その当時、韓国の方に教わった伝統的な、すごく長い変拍子のリズムがあるんですよ。地獄の不安定さと緊迫感に合うんじゃないかと。
芥川龍之介『蜘蛛の糸』より(画・蒲原元)
蒲原 不安定なのに規則が厳しい感じ(笑)。楽曲そのものがものすごく爆音を出せる容れ物じゃないですか、地獄の曲は。なのに規則は厳しいって不思議ですよね。
はたけやま そうでしょ。一人ひとりは爆発できそうだし自由になりたいけど、絶対になりきれない、守らねばならない規則があるという。ミュージシャン自身も地獄を感じるくらい、苦しさがあるかもしれないですね。
蒲原 そして現代そのものって感じもしますね。
はたけやま あぁ、そうかもしれない。

■喬太郎師匠に無茶ぶりした新作落語
――今回はゲストに落語家の柳家喬太郎さんを迎えられます。
はたけやま 落語と音語り色チームのコラボレーションにしたいと思いまして。喬太郎師匠にも「蜘蛛の糸」を題材にした新作落語を依頼させていただきました。世界初演、ネタ下ろしをしていただくんです。喬太郎師匠も取材で「無茶ぶりされた」って言ってましたね。私、無茶ぶり得意なんです。
 一部は「蜘蛛の糸」でのコラボです。喬太郎師匠の新作落語のネタ下ろしの後で、音楽とアニメーションで表現する「蜘蛛の糸」です。私は落語好きで、出囃子も6曲くらいアレンジさせてもらっているんです。柳家花緑師匠の「お兼晒し」、柳家小ゑん師匠の「ぎっちょんちょん」、喬太郎師匠の「まかしょ」の3曲をメドレーにして、最後の「まかしょ」で喬太郎師匠に登場していただきます。そして、二部は「星の王子さま」で、喬太郎師匠に朗読をしていただくんです。
 ですから落語ファンの方にもぜひ来ていただきたい。ネタ下ろし、絶対に聞きたいと思うんです。そして音楽ファンの方、文学ファンの方、そしてアニメーションファンの方にも楽しんでいただけるようになっています!
はたけやま裕
――「音語りの色」としては作品のバリエーションも多いですし、いろいろな形で全国を回りたい希望があるんですよね。
はたけやま どの文学作品をメインに据えることもできますし、ゲストを迎えることもできます。ツアー先の方をゲストに迎えて朗読していただくのも面白いですよね。
蒲原 会場の広さ、時間の長さ、ゲストによってピースを組み合わせてやっていけるパッケージです。教育的な視点でもできるだろうし、ポップで楽しいものだけにすることもできます。
はたけやま カホンなどのワークショップもセットでやることもできます。最小なら3人の編成で回れるし、ぜひ各地でやりたいです!

「音語りの色」ダイジェスト

取材・文:いまいこういち

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