神使轟く、激情の如く。 “地下アイ
ドル”から“バンドユニット”へと進
化、神激が初の日本武道館ライブで見
せた過去最高の通過点

神使轟く、激情の如く。日本武道館 単独公演-宣戦布告-

20223.30 日本武道館
“バンドユニット”神使轟く、激情の如く。(読み:しんしとどろく、げきじょうのごとく。=以下、神激)が3月30日(水)、自身初となる日本武道館での単独公演『神使轟く、激情の如く。日本武道館 単独公演-宣戦布告-』を開催した。
いわゆる“地下アイドル”から始まって、メジャーデビューすることなく活動を続けて4年半。結成直後から「日本武道館ワンマン」を一つの目標として公言してきた神激は、この日、誰にも媚びることなく、自分たちのスタイルを貫き通し、自分たちのやり方でロックの聖地、日本武道館の華やかなステージをつかみ取ってみせた。
実久里 ことの
神激にセンターはいない。実久里ことの、生牡蠣いもこ、涙染あまね、三笠エヴァ、二日よいこ、TiNAという6人は、誰もが曲のなかで自分の担当パートを持ち、クリーン✕3、ラップ、スクリーム、シャウトと自分が得意な分野でメインになっていく。だから、バンドのように誰か1人でも欠けるとライブが成立しないのである。“バンドユニット”とは、グループの形態はバンドではないがメンバーの在り方はバンドである、という、神激のマインドを表したものだ。
1曲の中で激しくテンポチェンジと転調を繰り返していく独自の楽曲を“プログレッシヴ・ミクスチャー・メタルコアサウンド”と呼び、新曲が出るたびに彼女たちはその難易度をアップさせてきた。ライブ活動は毎年圧倒的本数をこなし、昨年はアイドルという枠を飛び越え、フェス系の先輩ロックバンドを本気にさせてしまう激しい対バン活動も繰り広げてきた。
生牡蠣 いもこ
メンバーたちは武道館公演の前日まで、ライブ後に渋谷に集まり、路上に立って地道にチラシを配り、武道館のチケットを手売りしてきた。ここまで決して簡単な道のりではなかった。最後までできることはすべてやる、諦めない――。そんな泥臭くさい彼女たちの活動スタイルこそが限界突破へとつながり、武道館ワンマンを現実させたのだ。
いよいよ、夢の舞台が始まる。客電が落ち、舞台後方とステージ左右に設置されたLEDビジョンにメンバー紹介を兼ねたオープニング映像が映し出されると、それに合わせて1人ずつオンステージ。いつもの黒い革ジャンとは対照的な、白✕ピンクの武道館仕様の衣装が新鮮で眩しい。推し色のペンライトが客席で振られるなか、ライブは武道館のタイトルにもなった神激の始まりの曲「宣戦布告」で幕開け。
涙染あまね
冒頭からアイドルである自分たちがアイドルシーンを皮肉たっぷりに歌い上げ、続けてプログレッシヴ・ミクスチャー・メタルコアを体現した“神奏曲”シリーズの始まりの曲「神奏曲:テンペスト」を颯爽とぶち込んでいく。三笠がワンパン、昇竜拳という必殺技を繰り出すと、よいこの高速ラップが炸裂。神激初のトライとなるリリックビデオを使った演出が、メッセージ性の高い歌詞に込められた熱量を増幅させ、ことのが《共に突破して未来へ》とパワフルに高音を響かせたところで場内には熱狂が渦巻く。
ことののタイトルコールに続いて披露された「青瞬螢歌」は、せつない歌メロが夏の匂いに包まれた青春の思い出を呼び起こし、よいこが「東京は夢を追いかける最高の場所」と言ってジャージーなイントロから「神奏曲:アブソルートゼロ」が始まると、レーザーが飛び交う中、都市の夜景がスクリーンいっぱいに広がった。ここまで、武道館という広い会場で、いままで見たことがない大掛かりな演出があるせいなのか、彼女たちはいつもライブハウスで見ている姿とは違って、少し緊張しているのかパフォーマンスがちょっとよそ行きに思えた。しかし、ラウドロックとピコリーモにメロコアを掛け合わせた「オキシバギー」の楽しい振り付けが始まると、ここで緊張は一気にほぐれた。先にセンターのお立ち台に座っていた三笠の横にちょこんと腰掛けたTiNAが、三笠の背中に甘えるようにもたれかかって歌唱すると、それを見つけたいもこがセンターへ移動。TiNAの横から三笠を押し倒し、上から覆い被さっていちゃついていると、他のメンバーにも笑顔が広がっていったのだ。
三笠エヴァ
Tinaが笑顔で短い挨拶と来てくれた人への感謝の気持ちを伝えたあとは、「ここに来たからには後悔したくない」とあまねの独白が始まる。囁くような声に合わせて、バンドもいないのに後ろで流れている音があまねの口調に合わせてどんどんせつなさを増していくのは、マニピュレーターが“7番目のメンバー”としてその場に居合わせ、リアルタイムで楽器を演奏するように音を操作しているからこそ。今日はいつもにも増してこの音がせつなくて、そこから始まった「夏聲蝉時雨」が胸の奥まで沁みてきた。
そんなメランコリックな思いを吹き飛ばすように、激しいギターのリフを左右にスピーディーにパンさせ、大会場ならではの立体感ある音像を体感させていった「神奏曲:インフェルノ」。そこから「生まれ変わっても自分になりたい」では曲中、ピアノをバックにいもこが激白。「私はいつも片隅にいるようなタイプで、自分に自信がなかった。それでも私は、生まれ変わっても自分になりたい。これは自分1人じゃ思えなかった。君たちがいてくれて、君たちが教えてくれたから」と伝えた直後、ピアノをバックに1人でいもこが歌い出したところはあまりにもドラマチックで鳥肌が立った。
二日よいこ
いもこの激白を引き継ぐように、続いて三笠が話しだした。「男のくせに、女のくせに、常識的に考えてとか、人は枠にはめたがる。そんな枠組みや、誰かの普通なんて必要ないことをいま証明します。でも、誰かが言った一つの言葉がどうしても超えられへんと思ったとき、そのときは、どうかこの曲と、この場所を思い出して」と言葉を結び、届けたのは重心低めのメタルコア「神奏曲:ガイヤ」。あまねのスクリーモからブレイクダウンを迎えたとき、場内が真っ暗闇に包まれた。水を打ったようにシーンと静まり返った客席。いつも以上に無音が長くて、ドキドキが高まる。みんなの意識が極限まで集中していったなか「この命を叫びに変えて武道館に捧げます」とあまねが語り、そのあと全身全霊をかけたスクリーモを轟かせた場面は最高にしびれた。
場内の温度はもちろん急上昇。ベースとピアノがキレキレの初期ナンバー「喪失のカタルシス」を挟んで、Tinaが「せっかくの武道館、やりたいことあるんじゃない?」とメンバーに語りかける。すると、ここではなんと、いもこが3年前に「発狂的発散案件=惰性」のなかでことのに宛てて書いた《じっくり妄想シリーズ 武道館でやらせたる》をステージで生実演することに! ことのの茶番劇にいちいち苦情を入れていたいもこが限界を訴え、茶番は強制終了(笑)。「みんな、いまのでお腹いっぱいでしょ? このあとはデザートのケーキを用意してるから」という流れで「BAD CAKE」が始まるとこの上なく愉快な気持ちが弾け、気分は高揚。ここではブレイクダウン後、よいこが無音のなか1人でキレキレのラップをぶちかましていった。
TiNA
そうして、いまや神激のアンセムとして“神激バンザーイ”のフリでおなじみの「自己都合主義メタモルフォーゼ」で、場内をさらにアゲていく。毎回お楽しみの曲中のフリーゾーン。この日は、メンバー6人がステージいっぱいに広がり、Tinaに従って手を合わせて祈りを捧げたり、埴輪のようなポーズをとって体を左右に揺らし、武道館全員で踊りまくり、「合法トリップ:ボイルハザード」では息の合った一斉ジャンプで、ステージと客席の一体感をどんどん高めていった。
「やっぱりフロアの声、聞きたいよ」。メンバーも、神者(=神激のファンの呼称)もみんなが思っていることをたまらず嘆く。「だからさ、武道館またやろうよ。47都道府県もまたやろう。あのフェスも出ようよ」とライブハウスのような距離感で客席に賛同を求めたこのシーンはグッときた。「でも、ライブをこのまま楽しく終わるのは“らしく”ない。いまの自分たちの限界の曲、作りました。いまこそその限界を壊すとき。アンタとなら超えていける。限界突破!」と叫び、始まったのはあまねのスクリーモ、よいこのラップ、Tinaが地声で張り上げるハイトーンなど、神奏曲シリーズ史上最高難度のワザがあちこちで求められる「神奏曲:ライトニング」。これを、武道館のステージで過去最高にカッコいいアクトでビシバシ限界突破をしていった6人は、本当にカッコよかった。
そして、これまで神激の歌詞を書いてきたいもこは「最初の頃は強がりだった。なりたい自分。それしか言葉が言えなかった」といまだからこそ語れる胸の内を吐露。しかし「それを歌い続けていたら、強がって吐いてた言葉が現実に変わっていった。武道館も、昔から“武道館に立つ”と言葉にしてたら、いま現実に立てた。これは、いま強がって踏ん張ってる君へのメッセージ」と語りかけ、始まったのは「不器用HERO」。いもこが、ことのが、泣いている。このとき、LEDビジョンが6分割になり、メンバー個々をカメラが抜いていく演出もグッときた。
そして、ことのが「世間の人はラブソングとは言わないだろうけど、これはいまこの瞬間の思いをアナタに向けた私たちのラブソングです」と言って、大事なライブのときにしかやらない曲「Supvenova」をアクト。武道館で見た、6人が寄り添うように肩を組んで、一つになって歌うこのシーンは、メンバー、スタッフ、神者全員にとって忘れられない光景になったに違いない。そうして歌い終えたあと、会場に集まったみんなと記念写真を撮り、6人はステージを後にしてライブは終了した。
終演後には、LEDビジョンを通して9月11日に東京・豊洲PITで5周年ライブ『神使轟く、激情の如く。5th ANNIVERSART「轟音」』、2023年5月28日には東京・幕張メッセ国際展示場にて『GOD MAKE ERA』を開催することを発表。さらに7月に「ワールドブレーカー」、9月に「EGO PARADISE」、12月に「黎明ジャンヌダルク」、2023年2月に「SYZYGY」の4作品のMV解禁&世界配信が決定したことも伝えた。
日本武道館はすでに通過点。神激は今後もまだまだ限界突破を繰り広げていくに違いない。

取材・文=東條祥恵 

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