市川猿之助、六本木で大衆演劇の座長
になる~猿之助と愉快な仲間たち第2
回公演『森の石松』フォトレポート 

「猿之助と愉快な仲間たち」の舞台『森の石松』が、2022年4月13日に六本木トリコロールシアターで開幕した。市川猿之助が若手の俳優や一門の歌舞伎俳優に活躍の場を作るべく立ち上げたプロジェクトの、第2回公演だ。スーパー歌舞伎IIや3月に歌舞伎座で上演された『新・三国志 関羽篇』など、猿之助の舞台を支えてきた俳優たちが、猿之助とともに大活躍する。
トリコロールシアターは、六本木交差点から3分。
脚本は横内謙介。出演・演出に猿之助。共演は、市瀬秀和、石橋正高、下川真矢、穴井豪、松原海児、そして石橋正次松雪泰子(4月13日〜19日。20、21日は市川青虎)ほか。音楽はSADA(破天航路)。開幕前日に行われた総通し稽古より、舞台写真とともに見どころを紹介する。

■トリコロールシアターに大衆演劇の一座がやってきた
本作は入れ子構造となっている。町の劇場「シアター停車場」にやってきた一座を巡る物語をフレームに、劇中劇で『森の石松』が上演される。
劇中劇の『森の石松』。
「シアター停車場」は、新型コロナ禍の影響を受けていた。2年先まで埋まっていた公演の予約は次々とキャンセルになり、今では家賃の支払いも滞るほどの経営難。それでも劇場主の徳さん(石橋正次)は、キャンセル料をとることもなく「俺はコロナには負けないよ!」と気丈にふるまっていた。
公演中止になった劇団の富山(大知)、BAR聚楽第のレイコママ(松原)、劇場スタッフの小松(郁治郎)。皆が徳さんを心配している。徳さんの過去が明らかに。青年会議所の大森(澤五郎)の秘密も明らかに。
ある日、どういうわけか大衆演劇の一座「七川虎之助劇団」の副座長(市瀬)が、サブ(右田六)とシゲ(翔乃亮)を連れて姿を現す。すぐに劇場の雰囲気を気に入り、ここで芝居をしたいと申し出るのだった。
「七川虎之助劇団」の副座長(市瀬)元はタクシー運転手の徳さん(石橋正次)。
次々と集まる「七川虎之助劇団」の劇団員たち。皆、煌びやかな衣装に大胆なヘアメイクで、見た目もキャラクターも実に個性的。再会を喜びあい、大いに賑わう。そこには「かつて同じ一座だったのだろう」と思わせる空気があった。出演者たちが、実際に猿之助のもとで舞台をともにしてきた「愉快な仲間たち」だからこそのリアルな一体感にちがいない。
七川虎之助一座の役者たちが戻ってきた!(中央は、段一郎)「七川虎之助劇団」の踊り手(穴井豪)。「七川虎之助劇団」の花形(下川真矢)。
そこに奈良橋(石橋正高)が入ってくると、皆の表情は急にかたくなる。一座解散の原因を作ったのが、奈良橋なのだ。さらに劇場の資金繰りのトラブルから、徳さんは窮地に立たされる。それでも皆に芝居を、この劇場で『森の石松』を。その強い思いから、徳さんはビッグボスを相手にある取引をする……。
一座に戻ってきた奈良橋(石橋正高)
ビッグボス役は、松雪泰子。ダブルキャストで20日と21日は、青虎が勤める。関係者席からどよめきが起きた松雪の姿は劇場で確認してほしい!
目線の先のビッグボスの姿は劇場で!
また、石橋正次と正高の親子共演も、今回の大きな見どころ。横内の脚本が、2人によって立体化される。正次は、時には国定忠治の台詞を聞かせ、時には少年のように表情を輝かせる。正高は、物語のキーパーソンを演じ、劇中劇では森の石松役を勤める。まっすぐな演技が石松の人間味となっていた。
復活公演に向けて一座が稽古する場面では、俳優たちの生き生きとした掛け合いが印象的だった。テンポの良さとグルーヴ感は、皆で稽古を重ねてきたことをうかがわせる。その周りで芝居の仕度をする俳優たちも、まさにそこで生きているようだった。
喜介、笑猿、翔乃亮、右田六

■ミラーボールがまわる、歌に踊りに盛りだくさんの娯楽ショー
大衆演劇がモチーフとあり、劇場の壁にはご贔屓から「七川虎之助劇団」へ贈られたフンドシ幕がかかっている。「時代劇のお芝居&歌と踊りのショー」という構成も踏襲し、観る者を飽きさせない。ショータイムでは、エモーショナルな音楽に照明演出が加わり、場内も高揚感に包まれる。
穴井豪「七川虎之助劇団」の女形(段之)
穴井はコンテンポラリーダンスで魅せ、段之は歌謡舞踊で拍手(と笑いの)喝采を起こした。愉快な仲間たちの表情に、ハッとさせられた。
一座の若手(笑猿、喜介)。一座の若手(翔乃亮、右田六)。
いよいよ登場する猿之助は、大衆演劇のスター・七川虎之助役。虎之介は現在、歌舞伎座と掛け持ちで出演しているらしい。石橋正次が『夜明けの停車場』を唄い、猿之助が踊りで華を添える。夢を見ているような妖艶さだった。

■圧倒的座長から無邪気すぎる佐与吉、そして猿之助へ
虎之助は、懐の深さと漢気で、一座の気持ちをひとつにした。流し目が美しい頼れる虎之介座長の姿は、この幕のうちに目に焼きつけたい。
市川猿之助
徳さん念願の『森の石松』が始まると、猿之助は、2役目の石松の弟・佐与吉で登場する。
取材時はゲネプロだったこともあり、猿之助は無邪気な佐与吉のキャラのまま、石松役の正高に演出したり、一瞬台詞につまった役者をすかさずフォローしつつ「気どっているから忘れちゃうんだよ」と切れ味抜群の助言をするなど、観る者はもちろん共演者たちをも心地よく翻弄し、笑わせた。
都鳥三兄弟に、市瀬、下川、穴井。日替わりゲストを迎えるお楽しみの一幕を経て、物語は激しい立廻りになだれ込む。夢と現実と芝居の世界が混ざり合いつつ、物語は舞台と客席をボーダレスにする幕切れへ。事前の取材で、猿之助は次のようにコメントした。
「お芝居の最後に僕らは、皆、ひとりの役者として舞台に立たせていただきます。コロナ禍で役者は、芝居をする場を奪われ、国からはまるで不要なゴミかのような扱いを受けました。その時の思いと、いま舞台に立てるありがたさを物語に絡め、作中の役者たちと重ねています。その意味でも、いま見ていただくことに意味のある芝居です。劇場でお待ちしています」
猿之助と愉快な仲間たち第2回公演『森の石松』は、2022年4月13日(水)〜21日(木)まで六本木トリコロールシアターでの上演。その他、豪華な日替わりゲストとのアフタートークも予定されている。

取材・文・撮影:塚田史香

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