【明田川進の「音物語」】第60回 サ
ンリオ時代のノウハウを生かせた「リ
トル・ニモ」

 僕はアニメ映画「リトル・ニモ」(1989年日本公開)で音の仕事を手がけています。制作に紆余曲折があり、莫大な制作費がかかったことで知られている作品です。
 この作品は複数のパイロットフィルムが制作されていて、僕が最初に関わったのは月岡貞夫さんがつくったパイロットに音をつける作業でした。プロデューサーの藤岡豊さんから相談されて、このときは会社にあった選曲用の楽曲を使いました(編注)。
 その後、この作品は監督がいろいろと変わり、最終的に波多正美さんがアメリカのウィリアム・T・ハーツ監督と一緒にやることになりました。絵コンテがかたまり、公開日も決まったタイミングで、アメリカの作曲家と楽曲をつくりたいからやってもらえないかと藤岡さんから話をいただきました。僕がサンリオ時代にアメリカで「METAMORPHOSES(メタモルフォーセス)」(邦題「星のオルフェウス」)の仕事をしていたのを知っての相談でした。僕の参加は映像をどうつくるかゴールが見えたところからでしたが、その前段階が本当に大変だったはずです。
 音楽はトーマス・チェイスとスティーブ・ラッカーの2人、テーマソングの作曲は「メリー・ポピンズ」などディズニー作品の音楽を多く手がけたシャーマン兄弟でした。アメリカに何度も行って彼らと打ち合わせをして、音楽の収録はビートルズのジャケット写真で有名な横断歩道があるイギリスのアビー・ロード・スタジオで行いました。海外で作業したのは1カ月ぐらいで、そのあとのダビング作業は日本でやっています。
 音楽の発注は、僕が絵コンテを読んで音楽をつける範囲を指定して、アメリカで打ち合わせ後いったん帰国して、曲ができたらまた行くというやりとりでつくっていきました。ホテルにキーボードをもちこんでその場で演奏してもらうこともあって、ピアノのスケッチができたあたりでロンドン交響楽団で演奏することが決まったと思います。
 この作品で僕は「ディレクター・オブ・ポストプロダクション」という役職でクレジットされています。一般的な音響監督の仕事にはおさまりきらないところもやっていたこともあり、藤岡さんがつけてくれました。日米合作作品の音をつくるにあたって、サンリオ時代のノウハウを生かせた部分が大きい仕事でした。サンリオ時代に手がけた作品の音響は、いろいろあって自分としては納得できるつくりかたができないところがあったのですが、「ニモ」のときはまっさらな気持ちで絵コンテを読んで、こんな感じにやりたいということが実現でき、海外とのやりとりもふくめ非常に勉強になりました。
編注:月岡貞夫氏によるパイロットフィルムは、2019年発売のブルーレイ版に音声つきで収録されている。

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