終わらない3月の偶然と奇跡 三月の
パンタシアが紡ぐ青春のスペクトル 
ライブレポート

2022.3.27(Sun)『三月のパンタシア LIVE2022「邂逅少女」』@Zepp Haneda
開演ぎりぎりに飛び込んだZepp Hanedaはすでに満員、静かな熱気が渦巻いていた。
三月のパンタシア、ボーカルのみあがその素顔を公開した11月のライブから早4ヶ月。アルバム『邂逅少女』を引っさげての東阪ツアーが幕を開けた。タイトルもズバリ『三月のパンタシア LIVE2022「邂逅少女」』。先に予定されていた大阪での初日は、みあの新型コロナウイルス陽性に伴い延期となり、この東京公演が初日となった。みあの体調への心配と、どんな内容になっているのかという期待。静かに暗転すると同時に万雷の拍手が静寂を破る。
オープニングはみあの語るプロローグから、様々な色の“青春”をかけ合わせて紡がれるブルーポップの祭典は、みあが書き下ろした小説『さよならの空はあの青い花の輝きとよく似ていた』テーマソングでもある「夜光」からスタートした。
水色を基調とした新衣装に身を包んだみあは続く「閃光」もスピーディーに歌い上げる、ど頭からストレートなバンドスタイルでロックを歌い上げる姿は、たしかに今まで違う新しい三パシを感じさせてくれる。
「今まで一番、最高の夜にします」力強い宣言から繰り出されたのは「101」。アッパーな曲調に合わせて客席も拳を上げ、クラップで感情をステージに伝えていく。興奮冷めやらぬまま続けて「君をもっと知りたくない」「幸福なわがまま」そして「あのね。」と打って変わってポップな曲調が連発で続く。さっきまで煽るように声を上げていたみあは踊りながら笑顔を見せる。やはり顔が見えるということで、みあの表情をダイレクトに感じられるのは今までと違う部分だと実感する。みあが微笑んでいると何故か嬉しいと感じてしまう。それは楽曲の力もあるが、これまで三月のパンタシアが積み重ねてきた信頼関係なのかもしれない。
今回のアルバム『邂逅少女』の完全生産限定盤には、みあが書き下ろした「再会」という小説が付属している。この小説をベースにした楽曲たちが散りばめられている。みあの生み出す文学と音楽によって表現される少女たちの再会の物語。MCのパートで展開されたのはみあのフリートークではなく、物語の別の側面を切り取ったポエトリーリーディングだった。
最初に語られたのは神崎美紀の物語。女子高生の彼女が教師に対して抱く恋心。みあが自分で語るその心情から奏でられたのは美紀のテーマソング「シリアス」。複雑な展開のこの楽曲に乗せて、禁断の恋心が歌い紡がれていく。
今までの三月のパンタシアは「始まりと終わりの物語を空想する」というコンセプトのもと、極上のブルーポップを展開し続けてきた。もちろんその青色に変わりはないが、今回のライブを見て思ったのは、青春のきらめきの中で変化する色味までしっかりと表現していこうとしていたことだった。まるで青いシルクの上に散りばめられた色とりどりのビー玉のような。黒い気持ちも、赤い気持ちもそこではブルーポップと混ざるように存在している。そのきらめきを感じられるこの音楽の時間は、どこか懐かしく、そしてどこか心が動き出す脈動のような興奮がある。
「逆さまのLady」「パステルレイン」と展開される中で、物語と音楽の相乗効果を感じることもできた。「パステルレイン」のサビの歌詞「知らなくていいよ」という言葉がまるで秘めた思いを胸に抱く美紀の言葉のように聞こえる。既存の音楽が、物語に触れることで化学反応を起こす。これこそ今の三月のパンタシアが持つ面白さだ。
池脇琴絵の物語、主人公である麻莉に対する淡い思い、伝えてはいけない気持ち。それを表現するパートの一曲目は「星の涙」だ。あえて心の鈍く暗い部分にもしっかりと光を当てていく。琴絵のための楽曲「君の幸せ喜べない、ごめんね」ではステージに膝を付き、感情のままに歌う。このエモーショナルな姿は顔出しなど関係なく見られなかった姿だ。みあも表現の中で自分の殻を破ろうとしている。感情をそのままに「青に水底」を畳み掛けるように展開する。物語の世界、ライブの熱量、音楽の風景、三重のレイヤーが空間を支配していく。
ポエトリーの最後は主人公、林 麻莉の物語、サイドストーリーで広がっていくのは三月のパンタシアの表現そのものだ。きっとみあは音楽の力と同じくらい、言葉の力を信じている。旅立ちの列車の物語から「花冷列車」へ。そこから「青春なんていらないわ」「はじまりの速度」「幸せのありか」と自身の代表曲を連発。最初少しだけ緊張しているようにみえたみあもフルスロットルだ。ステージで歌えることを全身で楽しんでいるのがわかる。悲しみも喜びも全部内包して歌うその声には、以前とは比べ物にならない力を感じる。
客席もそれをわかっている。みあの表情、動き、全てを焼き付けるようにまっすぐステージを見ながら大きく手を上げ、三月のパンタシアを全身で感じるように楽しんでいるのがわかる。幸福な時間。「いくつになっても青春は出来る」という古くから言われ続けている言葉を体現するように、Zepp Hanedaの温度は上がっていく。
物語を語り終えたみあがMCで伝えたのは、自身の赤裸々な思い。コロナに罹患して、自身を不甲斐ないと感じてしまったこと。それでも特別な「三月」をファンがSNSなどで盛り上げてくれて本当に嬉しかったこと。ファンは誰一人みあを責めてなんか居ない。ただ心配して、ただ安心して、今を共に楽しんでいる。
最終盤では「醒めないで、青春」で更に会場を盛り上げてから、ライブのために作られた「ランデヴー」へ。声は出せなくても手を上げることやクラップでコールアンドレスポンスは出来る。フラッグを背に担ぎ、ステージ狭しと駆け回るみあも全開だ。
「ライブが一番楽しいなって本当に思います」
そう語ったみあは、今回のアルバムに込めた思いについて話し出す。「私は君と出会えたことが特別だと思うけど、君はどうやって三月のパンタシアに出会ってくれたの?」偶然耳に入ったみあの歌が、たまたま心のどこかに刺さって今があるのかもしれない。それは偶然で、運命だと。
インタビューでもみあは「運命は偶然で、偶然は奇跡」と言ってくれた。アンビバレンツな2つの言葉はどこかループのように繋がっているのかもしれない。刹那的に感じる“青春”という思春期のきらめきを切り取り続ける三月のパンタシアが、その地平線の彼方に奇跡的な運命を感じているというのは、いつかは散りゆく僕たちの生命の意味すら肯定してくれている気がした。そんな思いを込めたアルバム曲「春に願いを」で本編は終了となった。
アンコールを求める拍手は止むことがない。白いツアーTシャツに身を包んだみあはアンコールを「イタイ」から始める。メジャーファーストアルバム『あのときの歌が聴こえる』から早5年、確実に成長を感じられるパフォーマンスだ。
MCではどこか素朴さを感じさせながらも、楽しげに話す。そんな彼女からのプレゼントは、この日初めて披露された新曲「アイビーダンス」だ。イントロのメロを聴いただけでわかるキャッチーさ、そう、この楽曲はフレデリックの提供楽曲だ。三原康司の生み出すダンスポップ・ロックは三月のパンタシアと混じり合うべくして出会ったような親和性で、客席に「一緒に踊ってみて下さい!」と踊った振り付けも。初めて披露したとは思えないレベルで思わずこちらも笑顔になってしまう。
アンコールも終りが来る、ライブ最後は「三月がずっと続けばいい」。大阪でのライブは4月22日に延期になってしまったが、三月のパンタシアにとって三月は特別な季節、それなら三月が終わらなければいい!三パシの三月はまだまだ終わらない!そんな気持ちを込めて歌われる最後の曲。昔好きだったあの人を思い出してしまうようなみあの甘い歌声を堪能して、2時間超え22曲の盛りだくさんのライブは終わった。
ブルーポップは進化していた。色とりどりの青春のガラス玉たちは、みあの表現によりさまざまな角度から光を当てられ、スペクトルのようにその色を瞬間ごとに変えていく。光はみあからだけ照らされているわけではない。ライブの空間に集うファンの思いと熱気、それも光だ。ライブで進化する三月のパンタシアの「三月はまだまだ終わらない」。
レポート・文=加東岳史 撮影=Viola Kam[V'z Twinkle]

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