山里亮太&紅ゆずる、BSスカパー!新
番組で宝塚歌劇への熱い思いを語る

大の宝塚歌劇ファンとして知られる山里亮太が、「BSスカパー!」でレギュラー番組『山里亮太の宝塚男子になってもいいですか?』をスタートさせる。宝塚OGを毎月ゲストに招き、宝塚歌劇の奥深い魅力について探っていこうとの試み。前星組トップスター紅ゆずるをゲストに迎えた第一回目収録直後の熱気冷めやらぬスタジオにて、番組について、宝塚の楽しみ方について聞いた。
ーー収録はいかがでしたか。
山里:めちゃくちゃ楽しかったです。収録に来たのかトークショーに来たのかわからないくらいで(笑)。笑っていたはずなのに、途中、自分の人生にすごく大事なことを教えてもらったような瞬間があって、不思議な感じで。番組を見ている方は、いろいろと前に進む勇気のようなものをもらえるんじゃないかと。まさか紅さんを招いてそんなことになるなんて。おもしろいことになるのはわかってたんですが(笑)。
山里亮太
紅:(爆笑)
山里:宝塚を目指す子たちも多分見ると思うんですが、そういう子たちにすごくためになる情報がつまっていると思う。自分が今いる状況、その状況が何もかもいやになってしまう状況って、人にはいろいろとあると思うんです。そんな状況で、たったひとつその言葉を唱えるだけでそのいやなものがすべて真逆になる、そんな魔法の言葉を教えてもらえたんですよ。そういうことって大事だなと思って。そういう話が随所にちりばめられています。おもしろい話が多かったんで、ちょっと気づきづらいかもしれませんが(笑)。
紅:(爆笑)。私はもう、山ちゃんさんがプロフェッショナルすぎて。
山里:そんなことないですよ~。
紅:自分が話をしていると、たまに山ちゃんさんがご自身の歩んで来られた道についてポロポロと話をされるんですけど、やっぱり、こうやって成功していらっしゃる方は、本当にいろいろな壁を乗り越えて来られたんだなと。だからオフィシャル・フォトもかっこいいんだなと。
山里:「かっこいい」は太字でお願いします(笑)。
ーー番組のコンセプトをお聞かせください。
山里:僕は宝塚の沼に、奥さん(蒼井優)の影響でハマって、なんておもしろいんだと思って。でも、周りに宝塚の話ができる男子がいない。劇場に観に行ってもあまりいないんですよ、男子。だから、宝塚男子というものをもっと増やしていきたいということがあって。僕みたいな初心者が楽しみ方を教えてもらうことによって、よりいろいろな人に宝塚を好きになってもらうということで、僕が沼にハマったきっかけのジェンヌさんに来ていただいてお話を聞くというところから、まずは特別番組が始まって。
(左から)山里亮太、紅ゆずる
ーーレギュラー番組に先がけてのその特別番組では、山里さんから乙女ポーズも飛び出したりしていました。
山里:乙女ポーズ、僕ひとつしか知らないんですよ(笑)。それって、劇場で実際に観ているときにやっているポーズなんです。こういう風になっちゃうんだって、自分で自分にびっくりしました(笑)。
紅:ありがたいことに、客席でそうなっていらっしゃる方、けっこう多いんですよね。
山里:いますいます。自分の中にこんな感情があるんだっていうのが本当に不思議で。かわいいアイドルをかわいいと思うのと違って、男として生きていて、かっこいい存在にキュッとなるという感覚が自分の中にあるというのが衝撃で。男優さんをかっこいいと思うのともまた違うんですよね。新しい感情、第三の感情みたいなのが芽生えるんです。それって宝塚でしか体験できない感情じゃないかなと思います。
紅:宝塚にいると、私たちも、どっち中心に見ているのかということがありますよね。女性側もいけるし、男性側でもいけるし。娘役さんが演じる役にしても、かわいい役もあればかっこいい役もあるので、そのときってどっちがどっちとかじゃない。もしかしたらそういう感覚に近いのかなと思いました。
山里:娘役さんにしても、歌上手いなとかきれいだなという感じで観に行くのかなと前は思っていたけど、かっこいいと思うとき、ありますもんね。
ーー宝塚歌劇との出会いは、山里さんの人生にどんなものを与えてくれましたか。
山里:人生を楽しむ選択肢が増えましたね。感情の引き出しも増えましたし、人にものを伝える上での方法も。何かにハマることの姿が素敵だという人たちが、宝塚好きの方の中にはいっぱいいる。どうして自分たちは宝塚が好きなのかということを説明してくれる姿とか、どんな状況下でも、その状況でできるマックスの宝塚への関わり方を見せてくれる人たちのかっこよさ、宝塚ファンのすごさみたいなものがあって。そこに自分がどういう形で援護射撃ができるかなという風に考えるようになりました。そういう方たちから温かく受け入れてもらえて、その恩返しとして、一人でも宝塚に興味をもつ人が増えたらなと思っていたら、こうして番組もやらせてもらえるようになって、恩返しが少しできたかなという感じです。
ーー紅さんとしては宝塚男子の存在はいかがですか。
紅:女性ばっかり客席にいるので行きにくいという話もたまに聞いたりしますが、今、客席にけっこう男性の方が増えてるんですよね。男性が観てもかっこいい、綺麗と思えるものですし、決して女性だけを対象とした舞台ではないので。男性の方には着こなしなんかもぜひ観ていただきたいですね。髪型とかも、燕尾服のときとスーツのときでこうやって変えて欲しいという女性の気持ちがわかると思いますし、ぜひ観て研究していただければ。そうしたら世の中にかっこいい男性がいっぱい増えると思うので。娘役さんのドレスの着こなしも最高ですし。男性が観ても女性が観ても、自分の隣にいる人はこうあって欲しいなという願望が芽生えると思いますし、実際の生活で取り入れられることもあると思います。
山里:一つひとつの所作、すごく素敵ですもんね。衣裳とかセットの豪華さは、美術館、アートを見るような感覚で楽しめるし、歌声を聴いたら音楽のライブとして楽しめるし、ダンスはショーとして楽しめるし、いろいろな楽しみ方がそこにあると思うんですよね。取り上げる作品もいろいろで、コメディ・タッチのものもあれば、僕がハマった『ロミオとジュリエット』のように誰もが知っている名作もありますし。初心者の方は、ストーリーがわかっている作品から入っていくといいんじゃないかな。わかっていると、そこに起きていることに気持ちをもっていけて、そこからいろいろな作品を観て知っていく楽しみもあるんじゃないかなと。
山里亮太
ーー今後番組で取り組んでいきたいことは?
山里:第一回の放送で紅さんともちょっと挑戦したんですが、僕の来世の夢がタカラジェンヌになることなので。
紅:その夢、便乗します。ぜひ同期で。
山里:じゃあ、星組で(笑)。それで今回、ある場面の再現にちょっとだけ挑戦したんですが、少しずつ長くしていって、最終的には放送一回全部宝塚の再現にしてみたいなと。そういうチャレンジングなことをする場合は、紅さんにお願いすると思うんですけれども(笑)。紅さんなら喜んでやってくれそうなので。
紅:(笑)。喜んで。
ーー退団後に宝塚についてこうして語れる場があるというのはいかがですか。
紅:最高に幸せなことです。宝塚にいたときはやはり舞台からお客様にお届けすることが多かったわけですが、ご活躍されている天下の山ちゃんさんが宝塚歌劇を好きだとおっしゃってくださるのって、皆さんに知っていただく本当にいい機会だと思うんです。宝塚って特定のファンだけで成り立っているものではないので。オールド・ファンの方が何回もリピートするということももちろんあるんですけれど、初めての方がご覧になっても絶対素敵だと思っていただけると思うので。こんな番組を立ち上げてくださって、現役にとっても私たちOGにとっても本当に幸せなことです。
山里:そう言っていただけたらうれしいですよね。一回でも長くやっていただけたらなと思います。
紅:宝塚歌劇についてどう発信していくか、私も現役時代にすごく考えたんです。テレビに出るときもあんまりはっちゃけたらいけないんじゃないかと思いつつ、はっちゃけたりもしてましたけど(笑)。舞台を観たことがなくても、テレビを見てファンになりましたという方がいるのもうれしいことだと思うし、山ちゃんさんのお話を聞いて、じゃあ自分も行ってみようかと思う方が一人でも増えたら宝塚はますます繁栄すると思うので。本当に感謝しています。
(左から)山里亮太、紅ゆずる
ーーここからは紅さんに引き続きおうかがいしていきます。現役時代にテレビに出演された際と、今回のようにOGとなってからで何か違ったことはありますか。
紅:現役時代は使わなかった言葉をあえて今回使ったりということはありました。その方がファン以外の方にもより親しみをもっていただけるかなという思いもあって。現役時代、特に誰かに言われるわけではないんですが、実際に聞いたときに美しくない言葉、最近できた言葉なんかは使わないようにしようと思っていて。そのあたりはそれぞれが考えていたし、考えていると思いますね。宝塚は夢の世界なので、そのときに現実を見るような言葉を使ってしまうと世界観が壊れてしまうということがあるので。でも、退団した私が必要とされているとするならば、宝塚はこんなに素敵なところなんだよということ、そしてフランクで話しやすい空気を伝えることも大切だと思うので。高級なフランス料理をバンバン出されるとすごいねで終わってしまいそうなところですが、誰でも食べているお好み焼きやたこ焼きが出てきたら「こういうのも食べるんや」みたいになるじゃないですか。そういう風に身近に感じていただけたらと思うんです。宝塚をイメージで毛嫌いする方もいるかもしれませんが、劇場に足を運んでいただくきっかけのひとつとなれたらいいなと思っているので。
OGとしてこうしてお仕事をいただいたとき、そこはきっちりと提示していくべきところなんじゃないかなと思っています。私は皆さんと触れ合いたかったので、現役時代、ショーでも客席降りを多くしたんです。観に来た方に一緒に楽しんで欲しいなという思いがあったので、コメディ作品にもいろいろと取り組みましたし。時代と共にメイクも衣装もセットも照明も変わっていく中で、百年以上続いてきた伝統は保ちつつ、時代に応じた形を取っていかないと浮いた存在になってしまうと思っていたので。笑っていただけると、お客様も参加しているという感覚が生まれるじゃないですか。そのことによって芝居も間も変わっていったりするので、寄り添うということを常に考えていましたね。
客席に話しかける「紅子」(紅が扮する、<劇場の案内係>という設定のキャラクターで、台湾公演やサヨナラショーなどにも登場した)もそのようにして生まれた存在ですし。「紅子」については、劇団内でむしろ、やれやれ~みたいな感じだったんです。やりすぎだみたいに言われたことはなかった。やり方がまずいとNGになっていたとは思うんですが。幸せだったのは、劇団スタッフが本当に私という破天荒な人物をとても温かく迎えてくれていて。みんな一律になっていくというか、はみ出したら叩かれるみたいに思うことっておもしろくないと思ったから、私は星組の子に、「何でもいいからやってみい」とか、「稽古場で掛け声かけてみい」とか言ってましたね。それぞれのトップさんがいろいろと考えてやってきて今の宝塚があると思いますし、私は私のやり方で。稽古場でかっこつけている暇がなかったし、できている振りをする暇もないというか、むしろそれがかっこ悪いと思ったので、勇気をみんなにももって欲しいなと思っていましたね。お客様にお見せするのに偽りの芸なんかおもしろくないからということはすごく言っていました。
紅ゆずる
ーー宝塚初心者にお勧めしたい作品は?
紅:『THE SCARLET PIMPERNEL』ですね。安蘭けいさんが主演した星組初演版(2008)、私も出演していましたが、舞台を作り上げるのが本当に大変だったんですよ。その後、月組で霧矢大夢さんも主演されて(2010月組版)、私も主演させていただきましたが(2017星組版)、それぞれのバージョンが全然違っていて、見え方が違うとご覧になった方におっしゃっていただいているので、ぜひ見比べて欲しいですね。冒険活劇で、『ベルサイユのばら』がフランス革命を王家、貴族側から描いているところがあるのに対し、主人公はイギリスの貴族で、また違った視点からフランス革命を扱っている作品で、小池修一郎先生の演出もすごくおもしろいと思うんです。小道具として封蝋が出てきますが、あの作品をきっかけに知って以来、かっこいいなと思って私もお手紙を書くときに封蝋を使っています。
ーー現役時代のファンとの交流について今、思うことは?
紅:出待ちとか、一人の人間を寒かったり暑かったりする中こんなに待ってくれているなんて、もっといたわってあげたらよかったなと今となっては思いますね。でも、そのときは私、必死だったので、そこまで神経が回っていなくて……。お金は取り戻せるけれども、時間は取り戻せない。私にそうやって時間を使ってくれていた方々に、本当に感謝しかないですね。本当に温かい空間で、私が夢を提供していたんではなくて、「紅ゆずる」という人間を皆さんが育ててくださっていたんだなと、今も感謝していますし、これからもよろしくお願いしますと思ってます。
紅ゆずる
ーー紅さんにとって宝塚で過ごした時間とは?
紅:「達成」なのか、「夢」なのか……。本当に夢のような時間を過ごしましたね。入るときは現実でしたし、でも、退団してみると、ひとつずつ考えるとつらかったことでも、今となっては全体として本当に楽しかったなと思えるし、なんて幸せな空間だったんだろう……と。自分はトップになれるような実力がないと思って努力して、努力というものがすべてを結び付けてくれたんだなと思いますし、ファンの方も頑張っている私を見て、頑張ろうという気持ちになってくださっていたんだと思うし。メンタル、そして宝塚歌劇が大好きだという気持ちだけは負けないという思いでやっていたんです。だから、男役「紅ゆずる」は、私とファンの皆さんとの合作という感じがしますね。
ーー退団して今思う「宝塚」とは?
紅:退団された方が口を揃えておっしゃいますが、本当に素晴らしい場所ですね。退団してからよけい気づく部分があるというか。在団中ももちろん思うのですが、かみしめている暇がないんです。退団してから初めて、……宝塚に山あったんやな、綺麗なんやな……と思いましたもん。川もこんなに綺麗なんやなって。それくらい、自分のことと組のこととで忙しかった。在団中、そこまで宝塚のことを考えていられたのって、やっぱりそこまですごく好きだからなんですよ。大切な青春の時期にそこまで情熱をかけられる場所だからこそ、百年以上続いてきたんだなと思いますし。だから100周年記念行事にもOGの方が皆さん喜んで出てくださったんだと思いますし、私も200周年記念行事にははってでも出ようと思っています(笑)。それくらいすごい場所、聖地ですし、私にとってはすべてでしたね。キャスト、スタッフ、関わるすべての方々がファミリーなんです。みんながお互いのことを考えていて。だから退団してから観に行っても「ただいま」という感じですね。深い深い愛の場所です。退団して思うのは、私の人生って、「宝塚ファン→現役→宝塚ファン」という感じだなと。ファンの気持ちもわかるし、受験生の気持ちもわかるし、入団してからトップになるまでのみんなの気持ちもわかるし、先生方のお気持ちもたくさんお聞きたし、すべてをひっくるめて今、宝塚ファンでいられることが、とびきりのチケットを手に入れたような気持ちですね。
(左から)山里亮太、紅ゆずる
取材・文=藤本真由(舞台評論家)   撮影=池上夢貢

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