林青空、
関東近郊3カ所を回る
ワンマンライヴの埼玉公演を開催
“『ワンマンライヴ 2022 「YUKIDOKE」』に来てくれてありがとう。埼玉でやるのは初めてです。今日はたっぷり歌うし、冬から春になって張り詰めた気持ちが解けてゆくような、緊張が解けてゆくようなライヴにできたらと思っています。よろしくお願いします”。
未来に向かって進む、前向きさと覚悟を歌った「光」。林はアコギを力強くかき鳴らしながら、想いをメロディーに乗せていく。小柄な彼女から感じられる健気さと、透明感のあるファルセットにキュッと胸が締めつけられた。「猫背」はソリッドなロックチューン。自信がなくて胸を張れない自分を“猫背”と表し、それをアツいバンドサウンドに乗せてシャウトするように歌う。アコギをエレキに持ち替える際にストラップが髪に引っかかるアクシデントもあったが、“ちょっと待って! 引っかかってんねん!”と関西弁であたふたする姿がなんとも可愛いらしく、会場にはやさしく見守るような笑顔が広がった。

4月30日@埼玉・西川口Hearts photo by 江隈麗志
そんな小さな幸せの詰まった何気ない日々を歌った楽曲も多く披露された。例えば「アイス」はアイスを買いにコンビニに行くという日常のワンシーンを切り取った楽曲。カウントに合わせてジャンプした彼女。観客も軽快なリズムに合わせて、体を揺らして楽曲に乗り、会場には笑顔がこぼれた。アコギの弾き語りで披露した「散歩歌」は大切な人と歩く散歩道の愛おしさを歌った楽曲。《猫ちゃん》や《電柱》など道すがらの情景が細かく表現されていて、集まったファンはきっと自分のいつもの散歩コースを思い出しながら聴いただろう。歌詞の情景描写はもちろん、エモーショナルな歌い回しなどからも彼女の感受性の豊かさが伝わってきた。

4月30日@埼玉・西川口Hearts photo by 江隈麗志
ライヴ終盤には2月にリリースしたデジタルシングル「雪解け」、ドラマ『おしゃ家ソムリエおしゃ子!』エンディングテーマにも起用された「ハイヒールシンデレラ」で会場を沸かせる。「雪解け」はライヴのタイトルにもなった楽曲であり、《どれだけ涙流したって》と歌うサビの透き通った高音が美しく響く。別れの瞬間を歌った歌詞は、流した涙が次の花を咲かせるための水になると比喩した、文学的な表現が印象的だ。少しオールドスタイルの泣きのギターソロも楽曲に乗せた心情を見事に表現していた。暗いムードに沈み込みがちな昨今、きっと誰もが雪解けを待っている。そんな気持ちを身近な恋愛に重ねて、少し後ろ髪を引かれる気持ちとともに歌った彼女。会場にはミラーボールが回り、キラキラとした光の粒がまるで雪が舞うような演出も相まって、実に切なくエモーショナルな気持ちになった。
一転、ポップなリズムと《ここらで失礼いたします》や《聖剣トング争奪戦》などユーモアたっぷりの歌詞で、会場を明るく楽しい気持ちで満たしてくれた「ハイヒールシンデレラ」。会場ではリズムに乗って観客も笑顔で体を揺らす。また、歌う彼女も実に楽しそうで、曲に合わせて首をかしげるポーズを取ったりと、表情も実に豊かだ。レトロなミニのワンピースを着て、髪をピンクに染めた彼女の可愛らしさが楽曲とともに弾けていた。そして、“今日は初めてライヴでメイクしてもらって、PAも照明もついて、バンドメンバーも新しくなって。こうして歌える環境を手放したくない。何倍にもして歌って、広げていきたい”と、インディーズ時代とは違う好環境であることに感謝しながら、自分の歌を広げていきたいと語る。過去、喧嘩して疎遠になってしまったライヴハウスの店長にも想いを馳せ、“やっていたらまたどこかで会えるかな?”と前向きに笑ったのも印象的だった。

4月30日@埼玉・西川口Hearts photo by 江隈麗志
ライヴではビートルズやオアシスなどUKロックの文脈を感じさせるクールなロックチューンの新曲も披露したことも追記したい。ピュアで繊細な歌声と、誰のすぐ側にもある気持ちを綴った歌。モノクロームの日常をカラフルにしてくれるような、彼女の音楽の力と魅力が会場にはあふれていた。
photo by 江隈麗志
text by 榑林史章
■SET LIST■
※現在ツアー中のため、セットリストの公表を控えさせていただきます。

4月30日@埼玉・西川口Hearts photo by 江隈麗志