野宮真貴が40周年記念ライブで見せた
、素晴らしい過去と明るくみずみずし
い未来

野宮真貴40th Anniversary Live

2022.4.30 ビルボードライブ東京
大型連休の始まりに心浮かれる土曜日の午後、ビルボードライブ東京で野宮真貴を愛でる幸せ。『野宮真貴40th Anniversary Live』は、音楽に祝福された40年を約90分で一巡りする夢のような体験だ。大阪公演では松尾レミ(GRIM SPANKY)が、前日の東京初日は横山剣が駆けつけ、祝賀ムードに花を添えた。さあ今日は? 昼のマチネー公演に続くソワレ公演、ハッピーな予感しかないアニバーサリーな夕べ、いよいよ開幕。
1曲目、鮮やかなエメラルドグリーンのワンピースに赤い頭飾りをちょこんと乗せ、リズムに乗る姿がいきなりかっこいい。曲は、再始動したポータブルロックによる新曲「Portable Love」。80年代テクノポップの残り香がロマンティックに香る歌と演奏に、思わず手足が踊る。演奏は、最近の彼女のライブではお馴染み、スパム春日井率いるロマンティックス。ツボを押さえたシンプルでタイトな演奏、ばっちりだ。
「今日はデビュー曲から最新アルバムまで、私の40年間をぎゅっと詰め込んでお届けしたいと思います。〈New Beautiful〉のタイトル通り、新しくて美しい音楽をみなさんと分かち合いたいと思いますので、どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください」。
小西康陽さんがこの曲の素晴らしさに嫉妬したという噂の曲です」――ちょっぴり自慢げに紹介した「アイドル」は、1985年のポータブルロックの代表曲で、テクノでアイドルでニューウェーヴな、時を超えてポップなサウンドが実に新鮮。さらにさかのぼって1981年、ソロシンガーとしてのデビュー曲「女ともだち」は、どことなくチャイニーズなフレーズが可愛らしく、キラキラした歌謡っぽさとテクノ/ニューウェーヴとの交差点に位置するような、不思議な魅力をたたえた1曲。歌いながら行進するみたいな振付もカワイイ。誰が作った曲? それは……。
「私の最初のプロデューサーでもあり、音楽業界の親代わりでもある方です。お迎えしましょう、鈴木慶一!」
キャンプに出掛ける少年のような、身軽な短パンにハットで登場したこの日最初のゲスト、鈴木慶一。彼女が「デビュー曲にしてすごく難しい曲を書いてくださったものだなと」と振り返ると、彼は「今聴くと新鮮。当時は何と呼んでいいかわからなくて、“新歌謡”と名付けました」と応える。彼女が「歌はほめられた覚えがないけど、足はほめられた」と言うと、彼は「でも歌のリズムは最初から素晴らしかったですよ」と返す。リスペクトとユーモアにあふれた親と子、師匠と生徒、もしくは親友同士の素敵な会話。
新曲「美しい鏡」は、40年ぶりに鈴木慶一が野宮真貴のために書いた楽曲に佐藤奈々子が詞を付けた、四拍子で始まって三拍子で終わる凝った構成と、ちょっぴりサイケデリックな音色がかっこいい楽曲。鈴木慶一が「これぞティーンエイジオペラ」と自慢すると、野宮は「また難しい曲をありがとうございました」と笑顔で返す。「最初にプロデュースされた時、この子が40年も歌っているとは、夢にも思わなかったでしょ?」と言ったのは、きっと本音だろう。素晴らしい音楽と、奇跡のような出会い。ムーンライダーズ45周年と野宮真貴40周年に、神様の祝福を。
野宮真貴のリクエストで、ムーンライダーズ「B TO F(森へ帰ろう~絶頂のコツ)」を一緒に歌う、愛とリスペクトに満ちた素敵な時間。盛大な拍手と共に鈴木慶一を送り出すと、続くピチカート・ファイヴver.の「Twiggy Twiggy」はラテンのリズムに乗って明るく楽しく軽やかに。リズムに乗って膝をぽんぽん叩くカワイイ振付を、何人ものオーディエンスがうれしそうに真似している。「私を世界に連れて行ってくれた曲です」という紹介もうなずける、当然の代表曲。
アルバム『New Beautiful』収録の「東京は夜の七時(feat. Night Tempo)」に乗せて、スクリーンに次々と映し出される懐かしい写真。ソロ→ポータブルロック→ピチカート・ファイヴ→再びソロの40年間、変わらないものは? と言えばおしゃれのセンス。お色直しを終えてステージに立つその姿は、白いミニスカドレスに白いティアラ、銀のヒールサンダルで眩しいほどに輝いて見える。曲は「歌う「おしゃれ手帖」」。ランウェーを歩くモデルのように、ステージを左右に動き回って手拍子を促す、優雅な仕草に見とれるしかない。
「この日のために大好きなマッセ*メンシュに作っていただきました。やっぱり私はこういう60'sのミニのドレスが好きです。好きだったら迷わず着るのが私のポリシー。年齢は関係ございません」。
堂々たるおしゃれ宣言で拍手を浴びたあとは、おしゃれなニューアルバムとツアーグッズ紹介。そして、撮影オッケーのおしゃれ写真タイム。「一番よく撮れた写真をSNSにアップしてくださいね」というセリフもおしゃれ。ドラムス山本真央樹、ベース川崎哲平、ピアノ永山恵理、バンマスでギターのスパム春日井と、メンバー紹介もおしゃれ。さらにおしゃれなゲスト、最後の渋谷系ことカジヒデキを呼び込むと、華やかムードは一気にピークへ。
トレードマークの短パンにブルーのジャケットで決めたカジヒデキと野宮真貴は『渋谷のラジオの渋谷系』で毎週生放送を担当する仲。作曲・高浪慶太郎、作詞・カジヒデキによる新曲「大人の恋、もしくは恋のエチュード」を歌う息はばっちり。ソフトロックでエヴァーグリーンな曲と、みずみずしい青春が溢れ出す歌詞のマッチングもばっちり。「大阪がGLIM SPANKYの松尾レミちゃん。昨日が横山剣さん、今日が慶一さんとカジくん。みんな世代が違うけれど、繋がっているのがうれしいなと思っています」と、世代を超えて受け継がれる音楽の素晴らしさを語るセリフもばっちり。
曲は、かつてカジヒデキがリプロデュースしたことのあるピチカート・ファイヴ「メッセージソング」。アップテンポの軽快なリズムに乗りながら、音楽を聴くことが夢や未来への扉だった頃の甘酸っぱいノスタルジーが頭をよぎる。カジくんと野宮さん、背中合わせのロックなパフォーマンスもかっこいい。そしてカジくんを送り出すと、楽しい時間はあっという間、本編最後はピチカート・ファイヴ「陽の当たる大通り」。アルバム『New Beautiful』の中で、タイのアーティスト・Phum Viphuritを迎え、ノスタルジックなソウル・フィーリング✕モダンなダンスグルーヴに生まれ変わったこの曲、ライブで聴くと実にあたたかくヒューマンな聴き応え。歌詞に合わせて♪バイバイ~と手を振る、会場全体を巻き込むパフォーマンスも本編ラストにふさわしい。
そしてアンコール。見てびっくり、銀テープをそのまま衣装にしたような凄い服を着こなせるのは、たぶん世界に野宮真貴だけだろう。曲はピチカート・ファイヴの絶対の代表曲「スウィート・ソウル・レヴュー」。世の中には、ハッピーやラッキーがいっぱいあるよね。口ずさむだけでふわっと心が軽くなる、永遠に解けない幸せの魔法がかかった名曲。さらに、40年間で出会ったすべての人の感謝を捧げる「サンキュー」へ。ぴったりの気分にぴったりの楽曲、今日のセットリストは最高だ。
「還暦までは歌いますと宣言していたんですが、2年前に還暦ライブをやって“まだまだ歌えるかもしれない”と思いました。もしかしたら、8年後の古稀でも歌えるかも? でも、まずは1日1日を大切にしていきたいと思います」。
さりげなく、しかし強い決意を込めた言葉に満場一致の拍手が湧く。そしてこの夜の本当のラストソングは、GLIM SPANKY松尾レミが書き下ろした新曲「CANDY MOON」だった。60's風のノスタルジーポップな曲調に、ダバダバドゥビドゥビというおしゃれスキャットがよく似合う。佐藤奈々子にも昔こういうタイプの曲があったかもと思い出し、やはり音楽は繋がっているのだとふと思う。ステージ後ろを隠していた黒幕がゆっくりと開き、六本木の美しい夜景が現れる。歌い終えた本日の主役が「みなさんありがとうございました。またお会いしましょう」と手を振る。多幸感溢れるなんて素敵なエンディング。
それは、40年間を走り抜けて、素晴らしい過去だけではなく、明るくみずみずしい未来を見せてくれた至福のひととき。4月20日にはニューアルバム『New Beautiful』が、そして5月20日にはポータブルロックの新曲&ベストアルバム『PAST&FUTURE』も出る。永遠のポップアイコンは歌い続ける。音楽は鳴りやまない。

取材・文=宮本英夫 撮影=Yuma Totsuka

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