THE 2 古舘佑太郎、失敗や後悔のバン
ド人生を経て、遂に本気で目指す日本
武道館

弱冠19歳の古舘佑太郎がThe SALOVERSとして2010年にデビューした時、10代特有のギラギラして尖りまくった初期衝動にぶち抜かれたのを未だに覚えている。しかし、志半ばで2015年に無期限停止してしまい、多大なるショックを受けたのも未だに覚えている。音楽人生のエピソード2をコンセプトに、セカンドキャリアという2度目のバンド経験者たちが集まった、2の結成が2017年。しかし、結果リズム隊の2人が抜け、2021年活動休止を発表する。またもか……と落ち込むが、今年2月22日に新メンバー加入と共に活動再開。バンド名もTHE 2と改名された。今回、サカナクションの山口一郎がトータルプロデューサーを務めた復活シングル「恋のジャーナル」に至るまで、事細かに古舘に今までの話を訊いた。あがきもがき悪戦苦闘しながらも、決して諦めず向こう見ずに走り続ける、古舘の生き様を感じていただきたい。

THE 2 古舘佑太郎

――The SALOVERSでデビューされて12年が経ちました。10代だった古舘君も30代に突入されましたが、こういったインタビューで変化など感じる事はありますか?
昔よりは素直に語れている印象はありますけど、ずっと同じ事を言っているんだろうなとは思いますね。若い時はカッコつけたいし、謎のキャラ設定をしたりもしていました。それにインタビューはどなたと話すかによって引き出されるものも違ってきますよね。憧れとしては誰と話しても変わらない事ですが、僕自身めちゃくちゃチャンネルがあって……。4チャンネルくらいはあるんですよ。例えば小さい頃、母親に「学校では「俺」と言ってるのに、家では「僕」と言っていて、気持ち悪いんだけどどうしたらいいんだろう?」と相談したりしていました。その頃は「俺」と「僕」の2人でしたが、大人になると5人ぐらいは出てきて。そりゃ、人に信用されないですよね(笑)。友達にも「ふる(古舘)は、その都度キャラが変わるから分からない」と言われます。僕は変な事だと思ってないんですけど、ある程度は愛想よくしつつ本当の部分は見せないようにしてますね。自分のことを厄介者だとわかっているし、仲良くなると平気で1日50回くらいは電話することなんかもありますから(笑)。不思議なもので、そういう事は女の子にはしないんですけど、映画『日々ロック』で共演した役者の井上ほたてひもには、共演してから親友で鬼電してたり(笑)。それを全員にしていたらヤバいので、人を信用していないんじゃなくて本性を見せないようにしているんだと思います。みんなそうですよね?

THE 2 古舘佑太郎

――バンドメンバーとの関係性は、どんな感じですか?
The SALOVERS​の時は、仕事もプライベートも関係ない360度の関わり方をしていました。今のTHE 2のメンバーにも全てを見せていますけど、音楽以外の喜怒哀楽は見せてないんですね。The​SALOVERSの頃は、「音楽以外の事がすべて音楽に繋がる」という精神論でやっていました。ギターには108回という煩悩の数だけ弾かなきゃとか言って、疲れて弾いてるから良いわけないのに108回目で「良いね!」とか言ってましたね。ドラムにも「良いドラムを叩くために、彼女と別れるべきだ!」と言って、別れてから叩いたらみんな「良いね」と言ったり。良いわけないんですよ、本人もヘコんでますから(笑)。2は、そんなThe SALOVERS​とも今のTHE 2とも違っていて。The SALOVERSはギラギラしていたとすると、2はキラキラしてましたね。The SALOVERSは青春という言葉の中に含まれているドロッとした鬱屈というか……。2は4人で立ち上げて合宿してインディーズレーベルから音源を出してという、青春という言葉の中で輝いている部分のような感じでした。

THE 2 古舘佑太郎

――僕はThe SALOVERSと2の捉え方を、古舘君とは逆の感じで勝手に捉えていました。
「若者」という言葉から連想させるのは、2の初期ですね。なのでThe SALOVERSと2は対比になりますし、全然違っていました。2はツアー先での宿泊も4人部屋だったり、キャッキャッしながら殺伐とした空気とかも無かったり。
――2とTHE 2ではリズム隊が替わりましたが、2人が抜けた時の心境は?
当然、メンバー2人の卒業に寂しさはありました。The SALOVERSの時は、メンバーが「せーの」で一緒に活動休止したので、メンバーから辞めていくという経験は初めてでした。ただ、とにかく2を終わらせてはいけないし、ひとりになってでもこのバンドを終わらせてはいけないと思っていましたね。そういう気持ちが暴走しすぎて、ギターのPちゃん(加藤綾太)と関係が悪くなった時もあり、解散手前までいったこともありましたね。僕がマネージャー目線になっちゃっていて、2とみんなを支えたいとまで思っていたけど、Pちゃんからすると「佑太郎くんはミュージシャンでしょ?」というズレがあって。そこでめちゃくちゃ話し合って、これからどうするか考えた上で、地続きとしての2はピンと来ずポジティブな意味で準備期間に当てるため活動休止を選びました。僕が足を止めるのが得意じゃなくせっかちなので、ジタバタしたいわけじゃないけど、結局はジタバタしているのかもしれないですね。正直どうなるかと不安もありましたけど、最高の形で戻って来れたと思っています。

THE 2 古舘佑太郎

――そんなTHE 2を、The SALOVERSの「ギラギラ」、2の「キラキラ」のように端的に表すならば?
ギラギラ、キラキラときて、THE 2は「メラメラ」ですかね。怪しげに光りたいというか。純粋とかストレートではなく、野球で言うならばシンカーで三振を取りたい。
――The SALOVERSや2とは違った、新しいバンド像を観られるのが本当に楽しみです。
ドラムの(歌川)菜穂ちゃんが入ってくれたのが大きかったですね。彼女には「大谷戦法」というのを使ったんです。それは、大谷翔平選手が高卒でメジャーに行く予定だったんですけど、日本ハムファイターズがドラフト指名して。彼は「行かない」と言い続けていたけれど説得したじゃないですか。あの時、日ハムは「入団して欲しい」という言葉は使わなくなって、ある時から「一緒に夢えようぜ」という言葉を使ったんです。実は赤い公園が解散して4日後には誘っていたので、我ながらヤバいとは思いますけど、バンドに誘うのは一番少年っぽい行為だし空気を読む事じゃないなと。空気を読まない方がいいなと思って、途中から「菜穂ちゃんの夢と、僕らの夢を全部叶えようぜ」と話すようになって、発表する1、2週間前ぐらいに入ることが決定したんですよ。それで思い出したんですけど、僕がThe SALOVERSを辞める解散ライブ前日に、あるライブハウスの店長に呼ばれたことがあって。その時、「辞めたいと思っても、周りが辞めさせないよ」と言われたんです。当時は意味がわからなかったですけど、実際そうなったし、何かある度に機会とチャンスをもらえたので、良い意味で音楽を辞めさせてもらえなかったんですよね。それはある種の褒め言葉でもあるし、評価されたような気がしました。赤い公園は10代の頃から仲間でありライバルで、2年前に津野米咲が亡くなり、菜穂ちゃんが赤い公園を引っ張っていたのも見ていたので……。本人も「もう音楽はいいかな……」と思っていたし、それは以前の僕と一緒だったんです。僕は辞める勇気と続ける勇気は、五分五分で両方カッコいいと思っているから辞めることを悪とは思ってない。けど、菜穂ちゃんは奇しくも僕が言われたように、「辞めたいと思っても、周りが辞めさせない」と思った。僕がその最初の人になりたかったし、The SALOVERS時代に叩いてもらった事もあったから、バンドや僕の歌にも合うだろうなと。それにこのバンドのコンセプトである「2回目の挑戦」にも一致するので、菜穂ちゃんしかいないと。ベースのもっくん(森夏彦)も前のバンドでバーッといって、バーッと落ちたとこを全部見ていたし、向こうも僕がそういう状態だったのを見ていただろうし。そして、彼も周りが辞めさせないだろうし、絶対に音楽で飯を食う人と感じていた。それはポニーテールスクライム時代から知ってるPちゃんにも思っていたので。そんな3人とやれてるのは幸せです。

THE 2 古舘佑太郎

――実際に4人で音を鳴らしてみての感想も教えてもらえますか?
良い意味で新鮮な感じはしなくて、普通にやった瞬間に音が鳴っていたというか。
――それは理想的ですね。サカナクションの山口一郎さんがトータルプロデューサーで入られましたが、これも思い切った動きですよね。
会社で言うと、経営改革として方針を変えているわけですからね。今までとは違うとこに行きたいと、Pちゃんとも話していて、とにかく今いる環境から脱皮したいなと。もっと上にも出て行きたいし、ライブハウスにもずっと出たいと考えていて、その答え合わせをしたくて一郎さんと話してみたら「世に出るべき存在だから背中を押したい」と言ってもらえて。その後も連絡していたら、「ここまできたら一緒にやろうか」と言ってもらえて今の座組が出来ました。今は、新しい事をやろうとする時に起きるプラスの意味でのもがきやあがきができています。

THE 2 古舘佑太郎

―― 山口一郎さんと一緒にやられてみて感じた事を教えてもらえますか?
サカナクションの厨房を中から見せてもらった感じで、「こんな隠し味を使ってたんだ」みたいな感じで色々と盗ませてもらっています。だから、めちゃくちゃ楽しかったです。曲は結構たくさんあるので、まずはこの座組で1アルバム1ツアーはやっていきたいなと。
――今ツアーという言葉が出ましたが、この4人でのライブがむちゃくちゃ気になります。
今までの僕の手法とは全く違う事になるでしょうね。お客さんの乗せ方もグルーヴも含め、全て変わってくるかなと。まぁ、リズム隊が違うと変わってきますから。The SALOVERSはヘタウマグルーヴというか、安いけどクセになる駄菓子みたいでしたね。2は割とストレートで直線的で混じりっけのないグルーヴで、なにとでも合う白米みたいな。それでいうとTHE 2は、変態ですね。リズム隊が独特で直線的じゃない。それにもっくんはグッドミュージックなバンド出身なので押せ押せのエイトビートじゃないので、珍味なカラスミみたいですね。
THE 2 古舘佑太郎
――最後にTHE 2として、どこに向かっていきたいかというのも聞きたいんです。
ぜんぜん思い入れも無かったのに、ぜんぜん届かないからこそ目標になったのが日本武道館ですね。仲間たちがガンガン武道館でやっていく中で意識せざるをえなくて。ハコへの憧れというよりは、やれなかった過去に対するケジメとしてやりたい。バンドも私生活も上手くいかない事の方が多くて、バンドは99が失敗や後悔で。これは卑屈では無くて、たった1つの煌びやかに輝く瞬間で全部をひっくり返せるのがバンドだなと。ザ・コレクターズ​の日本武道館を観に行ったんですけど、30年間一度も武道館でやっていなくて、あの年齢で武道館への切符を手にしたのを観て、そのたった1日で過去すらも光らせられることを知ったたんです。だから、負け惜しみじゃなくて、20代で武道館に手が届かなくて良かったなと。バンドというのは、一生を賭ける価値があるし、何十年かのバンド人生をたった1日で宝物にできる、そういう瞬間を追い求めてますね。本当にその日が来たら僕はどうなるんだろう? 意外とバンドを辞めるのかも知れないし(笑)。それは冗談としても、僕らは武道館でライブをできるようになっても、ずっと下北沢のライブハウスでもやっていきます。やっぱり大は小を兼ねるので。逆に僕らが下北沢のライブハウスしか見れてなかったら、日本武道館では一生できない。不思議なもんですよね。当然ですけど、日本武道館で早くやりたいです。
THE 2 古舘佑太郎
取材・文=鈴木淳史 撮影=日吉”JP”純平

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