ゼノモールが小売業界にもたらすもの
。VRで実現する未来の購買体験とは

自分の分身となるアバターを操作しながら、VR空間を回遊し、気に入ったお店を見つけたら、試着を経て商品を購入する。そんな世界が現実のものになろうとしています。

4月22日、株式会社KWDは、VRショッピングアプリ・ゼノモールをプレオープンさせました。同アプリでは、VRの技術を活用し、実店舗とECのいいとこ取りをしたショッピング体験が可能なのだそうです。

ゼノモールが実現する小売の未来とは。今回は、東京ビッグサイトで開催された『Japan IT Week・次世代EC&店舗EXPO』にお邪魔し、同アプリを展開する株式会社KWDの広報担当の方にお話を伺いました。

Photography_Yutaka Ban
Interview & Text_Chihiro Yuuki
Edit_Sotaro Yamada

Japan IT Week・次世代EC&店舗EXPOにつ
いて

『Japan IT Week』は、東名阪・オンラインと場所を変えながら、年5回にわたって開催されるIT業界の見本市です。毎年1月の『Japan IT Week 関西』、4月または5月の『Japan IT Week 春』、6月の『Japan IT Week オンライン』、7月の『Japan IT Week 名古屋』、10月の『Japan IT Week 秋』から構成されており、主催するRX Japan株式会社は、日本最大のIT展示会であると謳っています。

今回取材に訪れたのは、そのなかでも最多となる32回の歴史を持つ『Japan IT Week 春』。公式の記載によると、2022年度の開催には、秋の400社を優に超える640社が出展しているそうです。

同イベントは、「ソフトウェア&アプリ開発展」「Web&デジタル マーケティング EXPO」「IoT&5G ソリューション展」といった12の専門展から成ります。そのうちのひとつ「次世代EC&店舗EXPO」は、実店舗とECの間にある境界を取り払うテクノロジーが集められた展示で、会場には、店舗のDXを支援するITツールや、ECサイトの構築・運用を補助する仕組みなどが集められていました。

コミュニケーションやイベントへの参加
を通じ、新たな購買体験を

(ゼノモールチームのみなさん)

――まずゼノモールそのものについて教えてください。何ができるアプリなんでしょうか?

ゼノモールは、仮想空間に広がるショッピングモールを実店舗さながらに利用できるVRショッピングアプリです。最近よく聞くメタバースと呼ばれるものですね。施設内にはさまざまなショップが存在していて、ユーザーは自分自身の分身となるアバターを実際に歩かせながら、自由にお買い物を楽しめます。オンラインショッピングの機能を実店舗のように利用できるアプリと言えばわかりやすいでしょうか。ゼノモールでは、コスメやアパレル、日用品、雑貨、食料品など、ありとあらゆるものを実店舗の感覚で購入していただけます。

――ECとの違いはどのような点にあるのでしょう?

最大の違いは、友人とコミュニケーションを取りながら一緒にショッピングが楽しめる点だと思います。アプリ内にはチャットスペースが用意されていて、そこでユーザー同士が会話できます。ショッピングモールにいる全員に向けてメッセージを送ることもできますし、友達だけに限定してメッセージを送ることも可能ですね。

また、ECでは、すでにイメージが固まっている特定の商品を探してお買い物をするケースが多く、実店舗でのショッピングにあるような、まだ見ぬ商品やブランド、ショップとの偶発的な出会いがありません。対して、ゼノモールでは、仮想空間にショッピングモールを再現しているので、そこでまだ知らない何かにも出会えます。
(実際の画面。自分の分身となるアバターを操作し、現実の買い物などを楽しむことができる)


――なるほど。ユーザー同士で会話ができるということは、アプリ内にフレンド機能のようなものがあるんですか?

はい。アプリを通じて知り合った方、もともと友達同士で一緒にゼノモールを使っている方とフレンドになり、グループをつくれます。フレンドのオンライン状況なども見られるので、お買い物をするためにふらっとアプリを立ち上げたとき、たまたま仲の良い方がアクティブなら、一緒にお買い物を楽しむこともできますね。今後は施設内で音楽など他ジャンルのリアルタイムイベントを開催する予定もあります。コミュニティツールとしての色も強いのがゼノモールの特徴です。

――ショッピングモール内には、自分とは関係性のない、そのときたまたまアクティブだったユーザーさんも常に表示されている?

いえ、普通にログインすると、すべてのアクティブユーザーが同時に存在する空間に入場することになるんですが、もうひとつ別の機能があって、フレンド同士だけの空間を表示することもできます。なので、実際のショッピングモールのようにワイワイ・ガヤガヤした場所が好きなら、普通にログインしていただければいいですし、友達同士で静かにお買い物がしたいなら、自分たちだけの方にログインしていただければいい。ユーザーの好きな形で利用できる仕様になっています。

――その場合、先ほど伺ったリアルタイムイベントは、どちらの空間にも表示されるんでしょうか。

そうですね。イベントの細かい仕様についてはこれから開発にあたるので、まだはっきりしたことが申し上げられないのですが、どちらの空間でも同じように楽しんでいただける方向性で開発を進めています。

――たとえば特定のアイドルが好きなユーザーだけが集まって、そのアイドルのイベントを貸し切りみたいな形で楽しむことも?

できますね。物理的な制約に縛られない点がバーチャルであるメリットなので、そういった強みを活かせるような設計にする計画です。イベントに集まった方々がその足でお買い物を楽しめたり、逆にお買い物に来た方がたまたま目にしたイベントに参加したり、双方に良い影響をもたらすプラットフォームになれると考えています。

VR・AR技術を駆使し、“試着”できるオ
ンラインショッピングが実現へ

(今後のアップデートで、音楽などのリアルイベントを楽しむことも可能になるという)

――アパレル商品の場合だと、実店舗では試着するシチュエーションがあるかと思います。こうした変化がアバターに反映されて、デジタル上でコーディネートを楽しむことも可能ですか?

はい、現段階では各商品の見た目だけをアバターに反映する試着機能ですが、今後はAR(拡張現実)技術を活用し、細かくサイズを把握できる機能を実装する予定です。アパレル商品だと同じSサイズでもブランドなどによってそれぞれ大きさが違うことも多いので、ゼノモールでは、商品ごとにモデリングをおこなって、オンラインショッピングにありがちな「届いたけど、色やサイズがイメージと違う」などのギャップを軽減できればと考えています。

――実際に実店舗で試着している感覚にどの程度近づけられるのでしょうか。

完全な形で再現するのは難しいですが、頭囲、胸囲、ウエスト、ヒップ、股下といった主要なサイズを事前に登録していただくことで、極めて現実に近い体験を提供することが可能です。

――その場合、各サイズは事前に知っておかなくてはならないということですか?

基本的にはそうですね。ただご自身のサイズを知らない方も多くいらっしゃると思うので、たとえば顔の形なら丸顔・面長など、標準的な型をあらかじめ用意しておき、そこからも選べる仕様にする予定です。

――国内で同様のサービスを展開している企業はありますか?

私たちも探しているんですが、今のところ見つけられていません。売り場をARで再現し、実店舗を訪れているかのようにオンラインでのお買い物を楽めるサービスはありますが、そうしたARショッピングモールとゼノモールには大きな違いがふたつあります。

まず、他のARショッピングモールでは試着ができない点です。商品の閲覧に関しては現実に近い形でおこなえますが、購入に関しては、ECと同じようにデザインやサイズを想像しながらおこなわないといけないんですね。

次に、扱うブランドや商品を限定しない点です。実店舗から派生した仮想空間のショッピングモールは、店舗のショップラインアップに依存しているため、品揃えが限定的です。たとえば伊勢丹新宿店さんのARショッピングモールでは、伊勢丹新宿店にテナントされているブランドの商品しか基本的には購入することができません。その点、ゼノモールはオールジャンルを扱っているので、1箇所で幅広いお買い物が楽しめます。アパレルブランドでのお買い物と、ホームセンターでのお買い物の両立もできる。この点も類似する他社のサービスにはない、ゼノモールの魅力となっていくのではないでしょうか。
――支払いはショップごとにおこなうんですよね?

いえ、ゼノモール全体で1つのカートを利用する仕組みです。また、私たちはECの物流をおこなっている会社が母体なので、ゼノモールで扱う商品をすべてまとめて配送することも可能です。モール型のECの場合、ショップごとに送料の基準が設けてあり、複数の店舗でお買い物をすると、2回分、3回分と送料の負担が増えることもありますよね。ゼノモールでは基本的にそういったことがありません。各ユーザー・ショップにとっては、送料やお届けにかかる日数まで含め、メリットの大きいサービスとなるはずです。

――店舗側の出店メリットだと、他にはどのような点が考えられますか?

大規模な百貨店・ショッピングモールへの出店よりコストを抑えた形で、実店舗のようなお客様との接点を持てることがあると思います。先ほどお話しした、偶発的な出会いを創出できる点ですね。

あとは、これまで実店舗・ECの2軸で考えられてきた小売の第3の軸として、どちらでも認知・発掘されていなかった新たな顧客を獲得できる点でしょうか。たとえば、「普段ショッピングにはあまりアンテナを張っていないけれども、リアルタイムイベントに訪れ、たまたま面白そうなブランドを見つけた」といったパターンがこれに該当すると思います。

私たちとしては、ゼノモールをきっかけに知り合ったお客様を、各ブランドの実店舗・ECに誘導していただいて構わないと考えています。ショップにとっても、ユーザーにとっても、ベストな方法でお買い物を楽しんでもらえればいい。双方にとって理想的なサービスになれるのではないかと自信を持っています。

また、店舗の内装費も必要ありません。ベーシックなものであれば、基本料金のみで内装デザインを提供いたします。さらにこだわりたいという場合には、追加料金でオリジナルのデザインを別途開発することも可能ですね。’]

――つまり、ゼノモールを活用すれば、家賃やテナント料、内装費、人件費など、さまざまなコストをカットできる?

はい、資金や労働力、場所に縛られることのない店舗運営が可能になると思います。長期的には、3DCGデザイナーともコラボレーションして、より凝ったデザインも提供できると面白いですよね。

ゼノモールが小売業界にもたらすもの。VRで実現する未来の購買体験とははミーティア(MEETIA)で公開された投稿です。

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ミーティア

「Music meets City Culture.」を合言葉に、街(シティ)で起こるあんなことやこんなことを切り取るWEBマガジン。シティカルチャーの住人であるミーティア編集部が「そこに音楽があるならば」な目線でオリジナル記事を毎日発信中。さらに「音楽」をテーマに個性豊かな漫画家による作品も連載中。

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