(C)2022ハピネットファントム・スタジオ

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【映画コラム】訳ありのボクサーを主
人公にした、熱き肉体派映画『生きて
てよかった』『義足のボクサー GENS
AN PUNCH』

 今回は、訳ありのボクサーを主人公にした、熱き肉体派映画を2本紹介する。どちらも、海外作品でも活躍している俳優が主演している。
『生きててよかった』(5月13日公開)
 子どもの頃、映画『ロッキー』(76)を見たことがきっかけでプロボクサーになった楠木創太(木幡竜)と、シルベスター・スタローンに憧れて俳優になった松岡健児(今野浩喜)。
 だが、楠木は、ドクターストップにより強制的に引退を迫られ、妻子がいる松岡もなかなか役に就けず、アルバイトに励む日々が続いていた。楠木は、リングへの未練と執着を捨て切れずにいたが、恋人の幸子(鎌滝恵利)との結婚を機に引退を決意する。
 新たな生活を築くために、地道な仕事に就いた楠木だったが、何をやってもうまくいかず、社会にもなじめず、苦しい日々を送る。
 そんな中、ファンを名乗る謎の男(柳俊太郎)から、大金を賭けた地下格闘技のオファーを受ける。久しぶりに上ったリングで忘れかけた興奮がよみがえった楠木は、松岡の協力のもと、再び闘いの世界にのめり込み、生きていることを実感していく。
 元プロボクサーという経歴を持ち、ドニー・イェン主演の『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』(10)の敵役などで、中国を拠点に活躍。最近は逆輸入の形で、ドラマ「アバランチ」で印象的な演技を披露した木幡が、リングでしか生きられない元ボクサーを演じるアクション劇。
 監督・脚本は鈴木太一。楠木に理解を示すボクシングジムの会長役の火野正平がなかなかいい味を出している。
 木幡の引き締まった肉体と格闘アクションはさすがの一言。ただ、この映画は、人物描写やストーリー全体に粗削りなところや説明不足が目立ち、せっかくの木幡の個性を生かし切れていないのが残念だ。
 また、同じくボクサーを主人公にした『あゝ、荒野』(17)や『アンダードッグ』(20)同様に、必要以上にボクシング(格闘技)とセックスを結びつけて描いているところには違和感を覚えた。もっとストレートにパンチやキックを繰り出してほしかった気がする。
『義足のボクサー GENSAN PUNCH』(5月27日沖縄先行公開、6月10日全国公開)
 沖縄に生まれ、母(南果歩)と共に暮らす津山尚生(尚玄)は、プロボクサーを目指しているが、幼い頃に右膝下を失い、義足を付けているため、日本ではライセンスを得ることができない。夢を諦め切れない津山は、フィリピンへ渡ることを決意する。
 フィリピンでは、プロを目指すボクサーたちが集う大会で3戦全勝すればプロライセンスが取得でき、さらに義足の津山でも、毎試合前にメディカルチェックを受ければ、ほかの者と同じ条件で試合ができるのだ。
 津山はトレーナーのルディ(ロニー・ラザロ)と共に、慣れない異国の地で夢への第一歩を踏み出す。
 ハンディキャップにくじけず、目標に向かう実在のボクサーをモデルに、彼を支える異国の人々やジムの仲間たちの姿を描く。タイトルの「GENSAN=ジェンサン」はジムがある街の愛称。フィリピンでのボクシング熱の高さが伝わってくる。
 昨年の東京国際映画祭でも上映された本作の監督はフィリピンの名匠ブリランテ・メンドーサ。彼の映画には台本がないという。それ故、フィクションなのかノンフィクションなのか、あるいは劇映画なのかドキュメンタリーなのか、その境界線がはっきりしないのが特徴だが、その分、緊迫感や臨場感が高まり、リアルさが増すところがある。
 この映画の場合は、ボクシングの試合や、津山と現地の人々との会話や触れ合いのシーンなどにその手法が生かされていた。加えて、役柄同様に、自身も沖縄出身で、海外作品にも出演している尚玄が体現する、ボクサーとしての“動き”も見事だった。
(田中雄二)

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