潮紗理菜(⽇向坂46)、矢島舞美、太
田夢莉らが常夏の太陽に負けない眩し
い笑顔を届ける 『フラガール -dan
ce for smile-』ゲネプロレポート

2006年に公開され、第80回キネマ旬報ベストテン1位、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画『フラガール』。昭和40年代を舞台に、常磐ハワイアンセンター設立までのエピソードを描いた傑作だ。エネルギーが石炭から石油に代わって行く中、炭鉱で生きる人々の生活と、フラガールとして成長していく少女たちの物語は多くの人に感動と笑顔を与えた。また、2008年に舞台化されて以来繰り返し上演されてきた本作。2019年からは『フラガール -dance for smile-』というタイトルで、総合演出・河毛俊作、構成演出・岡村俊一のタッグによって上演されてきた。再々演となる今回は、舞台単独初主演となる潮紗理菜をはじめとする新キャストを迎えて更なるパワーアップを遂げている。ゲネプロの前に、潮紗理菜(日向坂46)、矢島舞美、太田夢莉、兒玉遥、有森也実、河毛俊作による会見が行われた。
――まずは本作への意気込みを教えてください。
河毛:色々と大変な中で、3回目の上演です。『フラガール』は産業構造や時代の変化を描いており、今の時代にもリンクする物語。私たちを取り巻く様々な問題にどう立ち向かっていけばいいのかということも考えながら作りました。キャストの皆さんには、演じるというより役を生きてほしいと伝えました。素晴らしい作品になっていると思います。
河毛俊作
潮:紀美子ちゃんはすごく芯があって、仲間のために強くなれる。かっこいい女性だと感じています。私にとって憧れの存在でもあるので、少しでも近づけたらいいなという思いで、心を込めて演じます。
潮紗理菜
矢島:平山まどかはかつてSKDのトップダンサーで東京の大きなステージに立っていたけど、親の抱える借金に追われて借金取りから逃げる生活をしている。その中でフラガールたちと出会い、人としても成長していきます。今回3回目の出演ですが、フラガールたちが卒業しては新しい子が入ってくるので、毎回すごく新鮮な気持ちで演じることができています。稽古場で潮ちゃんが成長していく姿にも心を打たれて、まどかが紀美子たちに心を揺さぶられるのもこういう感じなんだろうと思いました。みんなそれぞれに格好いい生き様を見せているので、ぜひ楽しんでほしいです。
矢島舞美
太田:私が演じる早苗は、炭鉱から抜け出してダンサーになりたいという夢を持っていて、まどか先生にあってさらに憧れを強めていく。家庭の問題とも戦いながら頑張る女の子です。自分の一言で紀美子や色々な人の心を動かすので、重大さを噛み締めながら演じたいと思っています。
太田夢莉
児玉:舞台版オリジナルキャラクター・炭鉱娘の和美を演じます。唯一恋愛要素のあるキャラクターなので、炭鉱が衰退する中、守るべき存在がいる人の愛の物語・強さをしっかり表現したいと思います。あとは、炭鉱娘の中ではお姉さんなので、自立した女性を演じたいです。
兒玉遥
有森:私が演じるのは紀美子の母・千代。炭鉱の良い時代を知りながら、崩れゆくのを肌で感じてプライドと戦いながら生きる女性です。娘を通して新しい時代はどういうことなのか、親離れ・子離れはどういうことなのかを教えられる、大人代表の役回りです。ダンスというものの魅力が詰まっている作品なので、踊る人の美しさ、踊りの素晴らしさを感じていただけたら嬉しいと思っています。
有森也実
――今回の見どころを教えてください。
潮:舞台オリジナルキャラクターの和美さん。あと、みんなでたくさん汗をかいて練習してきたフラダンスを見ていただきたいですし、男性キャストの皆さんの熱く迫力がある存在感も素敵です。舞台ってこんなに素敵で素晴らしいんだとこの作品で感じているので、たくさんの人に届いたら嬉しいです。
矢島:なんと言っても最後のフラダンス。ようやくハワイアンセンターがオープンして、そこで踊るシーンです。みんなが汗水垂らして、葛藤と戦いながら夢見てきた物語なので、まどかとしても毎回グッときます。皆さんも彼女たちのスマイルに笑顔をもらえるシーンだと思うので楽しんでいただきたいです。そして、炭鉱で働く男たちとそれを支える千代さんたち。その時代を生きる人たちの絶対に曲げたくない信念と、子どもたちの熱い思いのせめぎ合いの中で生まれるストーリーがたくさんあり、どのシーンも心を揺さぶられると思います。強い生き様を観ていただけたらと思っています。
太田:再演ということで、お話をいただいた時に昨年の映像を観ました。その時もすごく感動しましたが、稽古場に入って、皆さんのお芝居を間近で見て、何度も感動して。映像以上のパワーなんです。生の舞台で、この至近距離でこの瞬間を共有しているからこそ感じられるものだと思うので、ぜひ皆さんにも足を運んでいただき、この熱量を観ていただきたいと思っています。
児島:2つあって、1つは私が劇中で恋人と駆け落ちするときのハグ。稽古中なかなかうまくできないと思っていたら、有森さんがお手本を見せてくださったんです。一瞬で青春ドラマが始まって、みんなから拍手が起きるほどのハグ!直々に教わったので、本番でもしっかり実践したいです。2つ目は、私の役は土下座のシーンが多くて。綺麗な土下座に注目してください(笑)。
有森:初演はコロナ前、そこから今まで、世界は色々と変化していて、これからどうやって生きていけばいいんだろうと感じることも増えたと思います。この3年で『フラガール』がお客様に近くなったのもあり、今やるべき作品だと思います。作品としても、3年間で成熟している。お客様と共にある舞台だと感じています。
――過去2公演との、演出における違いはありますか?
河毛:演出的な違いは、実はあまりないんです。ただ、キャストによってキャラクターは変わってきます。今回の早苗は今までで一番強くて、お姉ちゃんキャラ。それもあって、リーダーが抜けざるを得なくなり、紀美子がポジションを引き継ぐ部分が自然になったかなと。紀美子の挫折と成長が、今までとちょっと印象が変わると思います。あと、男性出演者が増えていて、細貝圭くんがまどかを追い詰める借金取りを演じています。今までは紀美子たちの成長物語だったけど、失ったものを抱えて福島に来たまどかが何を再獲得するか。自分がトップであり続けることができなかった女性が、指導者としてどう生きていくか。大人のドラマのウェイトが大きくなったかもしれませんね。あとは冗漫だった部分を整理したり、スピードをアップしたり。有森さんが言うように成熟させられたかと思います。
――最後に、潮さんからメッセージをお願いします。
潮:制服を着るときに、これまで紀美子を演じた樋口(日奈)さんと井上(小百合)さんのお名前があって。そこに私の名前も書いてあって、衣装を着るたびに身が引き締まる思いです。背筋は伸ばしつつ背伸びはせず、私らしい紀美子を演じられたら。天気予報によると公演期間中は天候が悪いようですが、この劇場の中は常夏の太陽くらい明るい光を、私たちでお届けできたらと思っています。それと、劇場に入って一番に思ったんですが、客席がすごく近い。この距離でお届けできることに、緊張と嬉しさを感じています。一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします。

<あらすじ>
昭和40年、かつて炭鉱の町として栄えた福島県いわき市。新たな燃料である石油の台頭によって石炭は斜陽産業と化していた。人員削減のために毎月リストラが発表され、何千人もが職を失っていく。そんな中で、町おこしの新事業として常磐ハワイアンセンター建設の話が持ち上がった。“常磐の温泉を利用してハワイを模したリゾート施設を作る。そしてハワイアンダンスのショーで盛り上げる”という計画に、労働者たちは反対する。
この町で生まれ育った早苗(太田夢莉)は、泥まみれの生活から抜け出すチャンスと考え、友達の紀美子(潮紗理菜(日向坂46))を誘ってダンサー募集に応募する。しかし、和美(兒玉遥)を中心に集まった女の子達は「裸躍りさせるつもりか?」と反発し、残ったのは数人だけ。そこにハワイアンセンターの企画部長・吉本(武田義晴)が元SKD のダンサー平山まどか(矢島舞美)を連れてくる。サングラスをかけて田舎者を下に見るまどかに不信感を抱く紀美子たちだったが、彼女の卓越したダンスを目の当たりにし、その魅力に引き込まれていく。
炭鉱で働く母親千代(有森也実)に反対される紀美子は、家を出てフラガールになることを決意し――。
会見でも言われていた通り、太田が演じる早苗は自らの夢を実現するために行動を起こすことができるしっかり者という雰囲気。ダンサーになりたいという語る姿は、希望よりも切実さに溢れているのだが、思いの強さが伝わってくることで周囲の人々が彼女に心を動かされるのも納得できる。踊ることに対する喜びが見てとれる丁寧なダンスも魅力的だ。
紀美子を演じる潮は初々しさが眩しい。地元を愛しているからこその親への反発、ダンスの先生であるまどかにも遠慮しない勝ち気さなど、等身大の少女らしい魅力を存分に見せてくれる。溌剌とした笑顔に、見ているこちらも和やかで明るい気分になる。紀美子と早苗の友情や絆にグッとくる場面も多く、自然と彼女たちの挑戦を応援することができた。
初演からダンスの教師・まどかを演じる矢島は、美しいダンスと自信に満ちた佇まいによってキャラクターに説得力を与えている。紀美子たちの前でフラダンスを披露するシーンの華やかさは圧巻。優美ながら力強いダンスは、生徒たちが一瞬で魅了されたのも頷けた。借金取りの石田や洋二郎とのシーンでは凛とした強さの中に弱さも垣間見え、まどかの魅力がさらに深まっている。
上演時間は約2時間10分とコンパクトながら、常磐ハワイアンセンター建設に向けて努力する人々だけでなく、炭鉱で働く人々の物語もしっかり描かれている。多くの反対を受けながらも地元の将来を見据えてハワイアンセンターの計画を進める吉本の熱意、引きこもりを脱却してダンサーを目指す小百合(大串有希)と彼女を応援する父・五郎(工藤潤矢)の親子愛、ここで暮らしていきたいからこそハワイアンセンターが必要だと考える光夫(近藤雄介)と和美のカップルの覚悟など、それぞれに共感できる部分があり、応援したくなる。
そして、炭鉱で生きてきたからこそ炭鉱が廃れる現実を受け止められない大人たちや、炭鉱での仕事に誇りを持ちつつ妹である紀美子の夢に寄り添う兄の洋二朗(高橋龍輝)の葛藤も大きな見どころ。高橋は無骨だが優しい炭鉱の男を好演。ずっと炭鉱で生きてきた母や仲間たちの気持ちを汲みつつ、自分らしい生き方をしたいという紀美子を見守り、まどかに対してもフラットに接する洋二朗を魅力的に演じている。
母・千代を演じる有森も、自らや亡き夫が守ってきた仕事に対する強い思いを持つ昔ながらの女性を存在感たっぷりに表現。娘の真剣な気持ちと努力を目にして頑なだった態度を和らげる様子から母親の深い愛が感じられる。
それぞれの想いと矜持がぶつかり合いながらも、ひたむきに努力する少女たちの姿によって少しずつ町が変わっていく様子に胸が熱くなった。
一人ひとりの生き様が丁寧に描かれているからこそ、様々な苦しみを乗り越えて迎えたオープン日のパフォーマンスの素晴らしさが際立っている。フラガールたちの弾けるような笑顔、穏やかな波を思わせるしなやかなダンスから、たくさんの元気や希望を受け取ることができるはずだ。本作は5月14日(土)~23日(月)まで、新国立劇場 中劇場にて上演される。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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