進化した『鈴木敏夫とジブリ展』に本
人登場、約8,800冊の本棚からジブリ
プロデューサーの頭の中を覗き見

4月23日(土)、京都文化博物館にて『鈴木敏夫とジブリ展』がスタートした。『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』など、世代や国を超えて世界中で愛され続ける作品を世に送り出してきたスタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫。初めて自ら「やりたい」と提案した同展では、少年時代から影響を受けてきた本と、その時代背景にスポットを当てる。最大の見どころは、約8,800冊もの書籍がずらりと並んだ巨大本棚。膨大な数の本や映画作品を通して、雑誌記者、編集者、プロデューサーとして活躍してきた彼の原点から現在までを紹介し、スタジオジブリの秘密や魅力に迫る。鈴木敏夫がどのようにインプットを行なってきたのか、彼の「頭の中」を垣間見ることができる内容となっている。SPICEでは、一般公開に先駆けて行われたプレス内覧会の様子を、本人の言葉も交えながらレポートする。
ジブリ作品の名セリフを鈴木敏夫直筆の書を吊り文字で立体的に展示
●アップデートを重ねた展覧会、カオナシも登場●
プレス内覧会は同展の見どころのひとつでもある、ジブリ映画の名場面を直筆の書で表現した「吊り文字エリア」で実施された。まずはスタジオジブリ社長室長の橋田真執行役員が挨拶、同展開催までの経緯を説明した。
鈴木敏夫とジブリ展 メインビジュアル
同展は2017年に広島 筆の里工房、2018年に愛知松坂屋美術館と石川金沢21世紀美術館にて行われた『スタジオジブリ 鈴木敏夫 言葉の魔法展』が発端である。続いて2019年に神田明神とハウステンボスにて、書やコピーを伝える内容からアイデアを加えた『鈴木敏夫とジブリ展』を開催、人気を博した。今回はそこからさらにアップデートされ、メインビジュアルの「また、会えたね!」というコピーに繋がると橋田執行役員。「鈴木が「こういうことをしたい」と言ったイメージを具現化した展覧会。少なくとも2019年の展覧会よりも進化している」と意欲たっぷりに話した。
スタジオジブリ 執行役員 社長室長 橋田真(左)とクラブハリエ 代表取締役社長 グランシェフ 山本隆夫
と、ここで滋賀県近江八幡市で洋菓子の製造販売を行うクラブハリエの山本隆夫代表取締役社長兼グランシェフが登場。実は今回クラブハリエとジブリがコラボレーション。トトロを外箱にあしらった限定パッケージのバームクーヘンを各日数量限定で販売する。
クラブハリエとコラボレーションした限定パッケージのバームクーヘン
2年前の冬、コロナの影響でジブリの忘年会が実施できず、社員に配るためにバームクーヘンのパッケージのコラボを行なったことがキッカケ。山本社長は「小さい頃からずっとジブリの作品を見て育ってきたので、一緒に仕事をさせてもらえるというのは幸せで、今日は夢のような場所に参加させてもらうこと、本当に感謝しています。少しでもバームで皆さんを幸せにできたら嬉しいなと思います」と感慨深そうに話した。バームクーヘンは会期中、3階の物販エリアで購入できる。
博報堂DYメディアパートナーズ アートディレクター 小松季弘氏
続いて、同展の企画構成を担当した博報堂DYメディアパートナーズ小松季弘アートディレクターから展覧会内容の説明が行われた。「2022年の『鈴木敏夫とジブリ展』を史上最大の展示にすべく色々考えた」と小松ディレクター。「今回の展示は、鈴木さんの全てが網羅されている書籍『ALL ABOUT TOSHIO SUZUKI』(2020年)を元にグレードアップさせて作りました。構成は全6章で、鈴木さんが生まれてから今までの人生を、流れるように一緒に辿るような形になっています」と力強く語り、展覧会への熱意を覗かせた。
サプライズ登場したカオナシ
さらに、カオナシが応援に駆けつけるサプライズで会場を盛り上げた。ここからは実際の展示の様子を、小松ディレクターの解説をふまえつつ紹介する。
●血肉の源流を知られる序章●
第1章展示風景
第1章「四畳半の原風景〜少年時代の思い出〜」では、鈴木プロデューサーの生い立ちを辿りながら、少年時代に愛読していた漫画雑誌や文庫本、映画を特集して展示している。中学生の時にファンレターを書くほど夢中になったヘイリー・ミルズの出演作や、自身が収集したポスターなどの現物にも触れることができる。
そして小学校低学年の時から漫画などを読みふけっていた名古屋の実家の四畳半部屋を再現したエリアも登場。まるで鈴木プロデューサーが生まれた1960年代にタイムスリップしたような気持ちになれる。特筆すべきは、全ての展示物に「鈴木にとってどのようにインプットされたか」の解説パネルがついていること。非常にわかりやすい構成で、鈴木の血肉の源流を知ることができる。
第2章展示風景
続く第2章「東京へ〜激動の大学生活〜」では、高校を卒業して慶應義塾大学に合格し、18歳で上京した鈴木プロデューサーが学生時代に影響を受けた本や映画を一挙に紹介。
第2章展示風景
小松ディレクターは「慶應大学ならではの知識を得て、読みふけっていた小説や本、見まくっていた映画にフォーカスしています。慶應大学時代には学生闘争の混乱期も紛れこんでいますので、そこと絡めながら鈴木さんがいかに学生時代までに脳みその中を膨らませて知識を入れていたかを窺い知ることができます」と述べた。当時の貴重なキャンパスライフの様子も必見だ。
●インプットからアウトプットへ●
第3章展示風景
第1章と第2章は、いわばインプットの時代。ここからは大学卒業後に就職した徳間書店時代に移る。第3章「アニメージュへの道〜雑誌記者・編集者として〜」では、雑誌記者・編集者としての経歴を辿る。
第3章展示風景
『アニメージュ』編集長としての方針や誌面の作り方、仲間との挑戦を膨大な資料とパネルを用いてどのようにヒットさせたかを大解剖。人生のキーパーソンとなった人物紹介や、『風の谷のナウシカ』誕生秘話も盛り込まれており、見応え抜群の章となっている。
第4章展示風景
第4章「時代を読む眼〜ジブリとメガヒットはこうして生まれた〜」では、今まで一度もお披露目されたことのないジブリ設立秘話を一挙に特集する。『風の谷のナウシカ』の成功を経て、スタジオジブリの名前が決まるまでの経緯や設立当時の写真、『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』など、代表作品が完成するまでの秘話などを公開。
第4章展示風景
さらに、『トトロ』から最新作の『アーヤと魔女』までの宣伝方法やコンセプトアートに至るまでを網羅している。また、2022年11月に愛・地球博記念公園に誕生する、スタジオジブリ作品の世界観を再現したテーマパーク「ジブリパーク」についての展示も展開されている。
平日のみ撮影可能なフォトスポット(6月3日(金)まで実施)
なお、6月3日(金)までの平日のみだがトトロと一緒に撮影可能なフォトスポットも用意されているため、ぜひ来場の記念に撮影しよう。
●鈴木敏夫書き下ろしメッセージつき、湯婆婆おみくじマシーン登場●
第5章展示風景

第5章では、鈴木プロデューサーの書やラクガキを展示。小松ディレクターは「鈴木さんは常日頃、打ち合わせをしながらラクガキをしていて、宮﨑(駿)さんが「ものすごく上手いよね」とおっしゃっていました。それらを楽しんでいただく章です。また、京都会場ならではの展示として、丸紅新電力さんとジブリのコラボCMの鳥獣戯画の映像も見ることができます」と紹介。
第5章展示風景
鈴木プロデューサーが描いた信頼するスタッフの似顔絵なども展示されており、チームの絆を垣間見ることができる。
口の中に手を入れると開運・恋愛おみくじが引ける
歩を進めると、真っ赤な部屋に湯婆婆のおみくじマシーンが現れる。湯婆婆と銭婆が背中合わせになった構造で、湯婆婆側では「人生の開運おみくじ」を、銭婆側では「恋愛指南としてのおみくじ」を引くことができる。鈴木敏夫書き下ろしの応援メッセージが書かれているので、マストで挑戦したい。

思わずワクワクする本の小径
湯婆婆の部屋を出ると、両側に本棚が並ぶ「本の小径」に迷い込む。レトロな照明とアンティーク小物、そして書籍を眺めながらカーブ沿いに進んでゆくと、突き当たりには部屋一面に本棚が広がる。
第6章展示風景
ラストを飾る第6章「鈴木敏夫の本棚」だ。天井に届く圧巻の巨大本棚は、東京・恵比寿にある「れんが屋」と呼ばれる鈴木プロデューサーの隠れ家をもとに構成。ウィリアム・モリスの「いちご泥棒」の壁紙とあたたかみのある家具、おもちゃに囲まれた空間は、本好きはもちろん、ジブリ好きにとっては垂涎もの。「鈴木さんの脳みそを見るような感じで、どんな本を読んだのかを楽しめる空間になっております」と小松ディレクターは語った。

●「この夏に74歳になる。それを全部振り返る展示」●
スタジオジブリ プロデューサー 鈴木敏夫(直筆のカオナシの前で)
内覧会には、鈴木敏夫プロデューサーも登壇。展示への思い入れを聞かれると「僕はこれまで、「ああいうのやりたい、こういうのやりたい」と言ったことがなかったんですけど、今回初めて自分の希望を述べたんですよ。それは何かというと、自分の読んできた本を一堂に会したい。それこそ子供の頃から70年くらいの本を全部集めてみたらどうなるんだろうと。僕、割と(本を)取っておく方なんです。それを全部並べてその真ん中に立ってみたいなという希望があったわけです。今回実現してすごく嬉しいです」と笑顔を見せた。
また、8,800冊の中にベストセラーがなかったことに気づき「自分の好きなものだけを読んできたんですね。自分でもびっくりしました」と語り、数々の大ヒット作で人々の心を動かしてきたことについては「人の心を動かそうとは思っていなかったですね。楽しんでもらおうというのはありました。僕は子どもの頃に映画を観に行った時の宣伝文句が好きだった。それは心を動かすんじゃない、一緒に楽しむでしょう(笑)。そういうのがワクワクしたんですよね」と、嬉しそうに語った。鈴木敏夫という人が、昔も今もずっと突き動かされてきた純粋な好奇心を感じられた。
ミュージアムショップにはオリジナルグッズがたくさん
『鈴木敏夫とジブリ展』は6月19日(日)まで京都文化博物館で開催中。音声ガイドは講談師の神田伯山が、展覧会アンバサダーは鈴木本人もファンと公言するタレントの滝沢カレンがつとめる。7月には東京寺田倉庫に巡回するが、関西での開催は貴重。見逃すことのないよう、ぜひ期間中に訪れてほしい。
取材・文・撮影=ERI KUBOTA

アーティスト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • POP TUNE GirlS / 『佐々木小雪のイラスト花図鑑』
  • POP TUNE GirlS / 『涼水ノアの、ノアのはこぶ絵』
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」

新着