しなやかなラップに込めたRin音の真
意「僕の曲が答えを見つける糸口にな
れば」

1stアルバム『swipe sheep』から約2年。待望の2ndアルバム『cloud achoo』をリリースした、ヒップホップシーンを牽引するラッパー、Rin音。メロウネスでポップなサウンドが溢れ出す新作を「娯楽目的に聞いてほしい」と公言しつつ、物語としても楽しめるリリックに込められた、実態のない噂話に惑わされることなく生きるためのブレない思いについて訊いた。
Rin音
噂話とかが理由で死んだら弁解も反論できない。大事すべきは「自分」
ーー1stアルバム『swipe sheep』から約2年を経てリリースされた待望の2nd album『cloud achoo』。出会いと別れが交錯する春の切なさとシンクロする「Blue Diary」で始まるんですね。
「Blue Diary」は去年のツアー(『Rin音 "swipe sheep" RELEASE TOUR「色々あって初ツアーがZeepになっちゃったツアー」』)のタイミングで、アニメ『アオアシ』のエンディングテーマの話をもらったんですけど、ちょうど青春っぽい歌詞を書きたいと思っていたタイミングだったんです。
ーースペシャルゲストでクボタカイさんとasmiちゃん、シークレットゲストでA夏目くんとICARUSくんが参加したツアーですね。
緊急事態宣言が再発令されてツアーが延期されたり、難しいタイミングもあったんですけど、友達が助けてくれて、結果的にうまくいって……。それが部活だったり自分の学生時代の経験と重なり、その青春っぽい感じをそのまま曲にしようと思い、ツアーが終わってすぐ書きました。
ーーShun Marunoさんがトラックを手がけた「heaven town」のリリックには、<生と死を繰り返して輪廻を知る>という、Rin音くんの名前とシンクロした意味深なフレーズも出てきますよね。
何かこう……死んだ後も感情が残るとしたら、結局変わらない世界線がずっと続くんだなと思っていて。この曲は友達でもあるShunくんの家で一緒に作ったんですけど、ローが効いた心地いいトラックと、僕の中にあるそういう、ちょっと卑屈な考えがいい塩梅で交わって出たのかなと思います。
Rin音
ーートラックに誘われるまま、自分の中にある「死生観」を描いてみよう、と。
死生観というと、死後の世界があるかないかみたいな話だと思うんですけど、正直どっちでもいいなと思ってるんです。ただ、死んだら現実世界の悩みから解放されて楽になる、という理論の意味がわかんないというか。死んだら現実じゃないところに行ってしまうわけじゃないですか。解決になってないんじゃないかな、と思うんですよ。例えば、噂話とかが理由で死んじゃったら、弁解も反論できない。だから死なない方がいいというか。もちろん、死にたい、終わりにしたいという感情はわかるんです。でも僕は解決したい派なんで。酷な話ですけど、自分が悪くなくても追い詰められてしまうタイミングもあると思うんです。でも、だからと言って死んでしまうのは、自分を大切にできてないということだと思うんです。基本的に大事なのは「自分」だと思ってるんで。
ーー追い詰められてしまう前にそれに気づける機会があるといいですよね……。
いろんな人がいるから軽率なことは言えないですけど……ただ、自分の身は自分で守るしかないなっていうか。基本的にみんなどうかしてるから(笑)、他人を頼り過ぎるのは良い策ではないっていう感覚はありますね。
ーーasmiちゃんをフィーチャーした「bless feat.asmi」。ここに描かれた恋愛の終わりもある種の<死>なんでしょうか?
僕の中でこの曲は死んだ2人の恋愛の歌なんです。本当の死は、世の中のみんなから忘れた時だと言われてるじゃないですか。この曲の2人は霊だからすでに見えないんだけど、みんなが忘れたタイミングでもう1回死んじゃうっていうか。その2度目の死が訪れるタイミングの歌なんです。
ーーそれが<透明な1つの死だ>というフレーズ。
けど、出会えて良かったねっていうところに生きるという概念が存在しているというか。
ーー姿は見えなくても心の中やDNAとして存在し続けるという考えもありますもんね。しかもasmiちゃんの声もすごくキュートだからリリックの切なさがいっそう増すというか。
そうですね。そういう感情とかを表現しようと思って歌詞を書いた感じです。多分、俺が1人で歌ってるよりも、男女両方の視点で聞きやすいというか、世界観に入り込みやすいと思います。
どんなイメージも全て僕の中にあるもの。嘘はないからどれもウェルカムです
Rin音
ーーアルバム『cloud achoo』の鍵とも言える、エレクトロポップなトラックの上で言葉遊びと毒が軽快に炸裂するアルバムのタイトル曲「cloud achoo」。雲やお化けを意味する「cloud」も、くしゃみの擬音である「achoo」もネット世界などの仮想世界のメタファーなんでしょうか?
なんかこう、いろいろ降りかかる時ってあるじゃないですか。ヤジであったり罵倒であったりとか。そうやっていろいろ言ってるやつにはどうせ理解できないだろうって感じで、遊びながら書いた歌詞ですね(笑)。
ーーしかもこの曲では軽快に毒を吐きつつ見事に韻も踏んでいる!
一応ね、ラッパーなので(笑)。ラッパーに限らず、思ってることがあったら言うタイミングを作った方がいいし、自分を大切にした方がいいし。当たり前のことだけど後回しにしがちなことだから、例えば僕の曲と出会って聞いてもらって……それで自分が答えを見つける糸口になればなと思いますし、なんなら歌詞は僕自身が迷った時のために書いてるようなものなんですよね。歌詞を書きながら自分の意思を統一していくような作業なんで、そこは自分がぶれないように、自信を持って書いていけたらなとは思ってます。

Rin音

ーー声質も含め、「snow jam」や「夜明乃唄」などの柔らかな曲でRin音というアーティストを知った人も多いと思うんです。今回は硬派なトラックと静かな怒りを秘めたラップを聞かせる「hell virgo feat.ICARUS」も新鮮ですが、どこかにソフトなイメージを覆したいという思いもある?
逆にそこは意識してないというか。別にどこから聞き始めてもらっても全然構わないし、全てが僕の中にあるもので、どれも嘘ではないんで、どういうところで評価されてもウェルカムですね。別にヤンキーでもなかったけど真面目でもなかったし、相変わらずひねくれたまんまですけど、嘘をつくような作り方をしてこなくて良かったな、とは思ってます。
ーー基本的にはラップでバトルをしていた頃と同じ姿勢?
最近は自分の感情に入り込むのが苦手になって来たかもしれないですね。物事を俯瞰視する方が得意なんですけど、特にアーティストとして表現する時は俯瞰視ばかりしちゃう感じ。でもバトルは全く別というか、めちゃくちゃ熱くなります。なんかこう、バトルというスイッチがもう1個別にある感じですね。でも作品を作る時は、それがどう受け止められるかをしっかり考えたり、例えば好きという感情も、どう好きなのかを伝えたかったり、ディティールを言わないと気がすまない感覚があって。じゃないと勘違いされたり、いろんな解釈が生まれちゃうから、ちょっと時間がかかるんです。
ーー誰もが自分の意見を発信できる時代ですもんね。
だからいろいろ考えちゃいます、本当に。この間、アルバム『SHIBUYAMELTDOWN』に参加させてもらったんですけど、『#SHIBUYAMELTDOWN』のリリックに戦争という言葉を使っちゃったんですよね。その時はまだロシアとウクライナの戦争が起きてなかったんですけど、リリースされた時には戦争が始まっていた……。別に創作だし、そういう意味での戦争でもないし、ラップでは特に使いがちなワードだけど、それを1個入れたことでどう解釈してもいいようなルートが生まれてしまったというか。その教訓は僕の中ではすごい大きいですね。
気になるのはライブの見せ方や演出。観に来て良かったと思えるライブができたら

Rin音

ーーリリックの深みももちろんですが、今作には韻の踏み方とかフロウの美しさとか、改めてRin音というラッパーのスキルの高さを思い知る場面が多々あるんですよね。シティポップ風のギターサウンドが心地いい「sunny hunny」も、実は連続で6回も韻を踏んでいたり、一見しなやかに聴こえるラップもかなりハイスキル。
息遣いがすんなり聞こえるよう計算して何回も練習してるんで、本来ならもっと、「えぐいっ!」となるはずなんですけどね(笑)。やっぱ声色が渋い人とか、アバウトな息遣いや粗さが逆にワイルドに聞こえたり、すごいことやってる感が出やすいですよね。ただ、技術はあくまで技術で、主役になるべきなのはリリックだと思っていて。だから目立ち過ぎるのも良くないなとは思うけど、スルーされるのはちょっと嫌というか、すごいねとは言われたいですけどね(笑)。
ーーはい(笑)。「sunny hunny」のリリックには、asmiちゃん、クボタカイさん、Shunさん、ICARUSさん、A夏目くんというROOFTOPのレーベルメイトの名前も登場しますね。
去年のZeppツアーに参加してくれた人たちみんなの名前で、同窓会みたいな感じの曲ですね。ただ、これを作った後にラッパーのキズナくんがROOFTOPに入ったんですよね。だからキズナの名前が入ってなくて。キズナ、ごめんね(笑)。
ーー8月20日(土)から始まる全国7都市ツアー『Rin音Tour 2022 haunted house』でも、このメンツで聞ける機会があるといいですね。
やっぱりツアーをやるなら、ライブでしか味わえないシチュエーションを作りたいですね。生演奏でもやりたいなと思いますし、なんか一周回って、最近はもう、ライブの見せ方とか演出とかそういうものが気になってるというか。音源とはまた違った聞き方が出来るような、観に来て良かった、と思ってもらえるライブが出来たらなと思ってます。

Rin音

取材・文=早川加奈子 撮影=日吉”JP”純平

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