ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、是
枝裕和監督らに12分におよぶ拍手喝采
映画『ベイビー・ブローカー』がカ
ンヌ国際映画祭で公式上映

映画『ベイビー・ブローカー』が『第75回カンヌ国際映画祭』コンペティション部門に正式出品されたことを受け、現地時間5月26日(木)に是枝裕和監督、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン(IU)、イ・ジュヨンの5名がカンヌ入りし、ワールド・プレミアとなる公式上映が終了。上映時の様子と是枝監督囲み取材のレポートが到着した。
『ベイビー・ブローカー』は、『そして父になる』や『万引き家族』などの是枝裕和監督が初めてメガホンをとった韓国映画。子供を育てられない人々が匿名で赤ちゃんを預ける “ベイビー・ボックス”を巡るオリジナルストーリーを描いた作品だ。『パラサイト 半地下の家族』などで知られるソン・ガンホ、『MASTER/マスター』などのカン・ドンウォン、『空気人形』などのペ・ドゥナ、シンガーソングライター“IU”としても知られるイ・ジウン、『梨泰院クラス』などのイ・ジュヨンらが出演している。
古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、赤ちゃんポストがある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が“赤ちゃんポスト”に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、決定的な証拠をつかもうと、静かに後を追っていく。
ワールド・プレミアとなる公式上映が行われた会場は、カンヌ国際映画祭のメイン会場となるPALAIS DES FESTIVALS。2,200席の会場が満席となる中、大きな拍手に迎えられながら、レッドカーペットを終えた是枝裕和監督を先頭に、キャスト陣が続く形でにこやかに場内に入場し、上映が始まった。上映中は「赤ちゃんポスト」をきっかけに出会ったブローカー、母親、刑事たちの旅路に、中盤までは笑いがおこる場面も。終盤にかけては涙をすする音も聞こえていた。上映終了後は、12分におよぶスタンディングオベーションが続き、是枝監督とソン・ガンホ、カン・ドンウォンは3人で肩を組みお互いを称えあう様子も。また、イ・ジウン(IU)、イ・ジュヨンも是枝監督と目を合わせて微笑みあったり、場内を見上げて手を振り満面の笑みを見せていた。コメントを求められた監督は、「こんなに沢山の拍手で迎えてくれて本当に有難うございました。コロナの中で、すごくチャレンジングなチームだったと思うのですが、本当に一体感のある現場でスタッフ・キャストが一丸となって作り出した映画がここで皆さんのもとへ届けられたことをとても嬉しく思っています。有難うございました」とスピーチした。
是枝監督の囲み取材時のコメントは以下のとおり。
是枝裕和(監督)
――率直に今日の上映の感想を教えてください。
ちゃんと笑うところで笑い声が聞こえて、隣のソン・ガンホさんと手を握りあって最後まで僕自身上映を楽しめたので良かったのではないかなと思います。
――観客のリアクションはストレートに伝わってきましたか?
かなり笑い声が起きていたので、どのくらい現場で感じていたことが字幕で伝わるかは不安だったのですが、大丈夫だったなと思いました。
――スタンディングオベーション12分と聞きましたが、どうでしたか?
すごく良い反応をいただいたのですが、ちょっと長いなと思い、ティエリー(カンヌ映画祭総代表)にそろそろと手招きしたのですが、上の観客を見るようにと目で合図されて、上を見て手を振ってというのを3回くらい繰り返したので……でも、それも彼の演出なので。本当にあたたかい握手と笑顔に包まれたいい時間だったと思います。
――上映後、出演者とはどんな話をされましたか?
彼らも完成版を観るのは初めてだったので、ソン・ガンホさんは本当にいい映画になった、撮っている時にはこんなに感動的な映画になるとは思っていなかったと言ってくれました。編集を頑張ってよかったなと思えました。イ・ジウンさんとイ・ジュヨンさんは初めてのレッドカーペットでしたし、すごく緊張したと言っていました。でも上映中笑い声がおきてすごくホッとしたと言っていました。上映後は緊張がほぐれていい笑顔がみられました。
――何か想定外だったことありますか?上映後に改めて考えてみて。
何かを想定していたわけではないので、どういう反応なのかなと探りながら座っていましたが、思っていた以上にちゃんと届いたのかなと思います。
――韓国映画として韓国キャスト・スタッフ達とカンヌを迎えましたが、今までとの違いは?
フランス映画を撮ったとか、韓国映画を撮ったとか、日本映画を撮ったという意識ではないので、自分の好きな役者さんとその国で映画を撮っているという感覚です。
――韓国メディアの注目についてはどう思いますか?
囲みをやったら40人くらい記者がいて、ここはどこなんだろうと錯覚しましたが、今回はこれだけでなく、パク・チャヌク作品もありますし、「パラサイト~」の倍は記者が来ているらしいです。相当色々な意味で力が入っているんだなと感じました。
――ソン・ガンホさんと手を握ったのは上映中ですか?
はい、上映中です。笑い声が起きたところでお互いに手を探り合ったんですけど(笑)
――言葉を超えて分かり合えましたか?
そうですね。非常に順調に進んだ撮影ではありましたが、コロナ禍での撮影だったこともあって、色々と思い出すこともあり。ペ・ドゥナさんが今回こられなかったのが本当に残念なのですが、プロデューサーも撮影のホン・ギョンピョさんもいてくれて、あの場所でまた集まれたということの感慨が今日は大きかったです。
――上映後にマイクを持って挨拶されてましたが、今までああいうのはありましたか?
去年から始まったらしいんですが、あれはやめてほしいなあ(苦笑)4年前はなかった。
終わった後に監督が話すっていうのは……ティエリにはちょっと言っておきます。
――カン・ドンウォンさんは前回来れなかったこともあって相当感慨深かったのではないかと思いますが、どう思われますか?
『万引き家族』の時にも彼は顔を出してくれてね。すごくそういう温かさのある人で。彼は2年前のこともあるから、あのレッドカーペットを一緒に歩けたのは、僕も感慨深かったです。カン・ドンウォンさんとは上映後見つめあっただけです。普段からそんなにしゃべらないタイプですが、この後しゃべります。
――客席の反応について、笑いと同時にすすり泣く声も聞こえましたが、いかがでしたか?命がテーマという部分が伝わったと思いますか?
後半に行くにつれ、そういう感覚があったのかなと感じました。席が結構前なので、反応があんまり伝わってこなかったのですが、観客の体が動かなくなったりしていたので、あ、大丈夫だな、集中が途切れずに最後までたどり着いたなという気がしていました。
――文化の違う場所でも自分の手法が伝わったと思われましたか?
ソン・ガンホさんを観ていると、あのお芝居は万国共通に、いろんなことが伝わるなとは思います。今回は本当に、ちょっと信じられないくらいトップレベルの俳優さんたちが集まってくれて、僕にとってもとても稀有な経験ですけれど、それが作品にとって大きな力になっているのではないかなと思っています。
――トップレベルの俳優さんが集まったという現場ですが、彼らをどう導いた、どう引き出したのですか?
日本とやることはそれほど変わらないです。本読みをちゃんとして、みんなで違和感のあるところを意見を出し合って。役に対する自分の意見を手紙で伝えて、質問をもらって、撮影が始まってもそのキャッチボールを続けていくという作業ができたのが良かったです。脚本も後半1/3は決定稿を出さずに撮らせてもらったけれど、それは韓国では異例中の異例でしたが、それを受け入れてもらって自分のやりたい形でやらせてもらって、撮影の途中で書きなおした脚本をキャストさんにも読んでもらって、その度にソン・ガンホさんは感想を言いに来てくれて、そういうことを重ねてたどり着いたラストだったので、そういうのがうまくいったんじゃないかなと思います。
――冒頭の名前が連なるところ(本編前の先付でカンヌにゆかりのある監督の名前が流れる映像)で、拍手が起きましたが、どんなお気持ちでしたか?
僕の後がフェリーニだったので、あれが一番重い……ティエリーに言っておきます。
――コロナ禍での初カンヌ。映画文化について改めて考えたことはありましたか?
非常に政治的な状況が動きがある中での開催で、映画祭にとっても試練だと思うけれど、カンヌはやっぱり昨年も香港の状況に対していち早く作品を上映するという選択をしましたし、今回もそこは態度を表明していますし、ウクライナのことだけでなくて、レッドカーペットというのが華やかな映画人がスポットライトを浴びる場所だけでなく、あの場所で抵抗なら抵抗など、声が小さな人たちにあの場所を開放して使ってもらうという、そういう場所として映画祭を開いていくという態度を僕は一番リスペクトしています。映画祭とはそういう場所なんだなというのを、4年ぶりにきて改めて認識しました。
――是枝さんはなぜ最近日本で映画をとらないのか? それは日本の俳優より韓国の俳優の方がいい俳優だからじゃないかと。
今回のキャストさんは素晴らしいですが、日本の役者さんも決して負けてはいないと思います。日本のトップの方たち、例えば役所広司さんとか安藤サクラさんとかは一緒にやって学ぶことが非常に多いですし。日本での企画もきちんと動かしています。海外で撮ったことをどう日本での映画作りにフィードバックして何を変え、何をそのままでいいのかを持ち帰りたいと思っています。
――韓国はキャストがトップからボトムまでのレベルが高い気がしますがどう思われますか?
演技の訓練を積んでますからね。その素養があるというのは大きな違いだと思います。それはフランスも同じ。ただ、僕みたいに役者じゃない人をキャスティングしたり、演技経験のない子供で映画を撮ったりすることの面白さ、勿論難しさもありますが、その面白さで映画を作っていたりすると、必ずしも訓練を積んでいるから面白いというわけでもないんです。ただ、日本の中で訓練を積んでいないのは役者だけではないし、僕も含め、監督も訓練を積まないといけないと思う。海外の監督はきちんと技術を学んで監督になっています。僕自身含め、コミュニケーションをとる言葉だったり、技術だったりを身に着ける必要があるなと思います。
――レッドカーペットでのサングラスがとても印象的でしたが?
来る前日に買いました。
――明後日が授賞式ですが、今はどんなお気持ちですか?
今回は上映までが長かったので、全然星取なども全く無縁のままここにきているので、終わりまでそんなに気持ちがザワザワしたりせずに、そのままクロージングまでいけるのではないかなと思っています。
また、カンヌ上映とともに、本作の本予告編も新たに解禁されている。
『ベイビー・ブローカー』は6月24日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。

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