吉幾三がついに明治座初登場! これ
までの感謝、平和や志村けんさんへの
思いを背負って~芸能生活50周年『吉
幾三特別公演』インタビュー

吉幾三が芸能生活50周年を迎えた。2022年7月8日(金)からは明治座で『吉幾三特別公演』が開催される。第一部は吉幾三の原案・音楽による舞台『親はがっかり!子はしっかり!』、第二部はヒット曲である『酒よ』や『雪國』など彼の音楽の世界を存分に楽しめるコンサートが予定されている。
どんな公演になるのか。取材会で吉幾三本人が思いを語った。
描かれる「親と子」そして「感謝」
吉幾三
ーー明治座初登場ということですが、まずは公演の意気込みを教えてください!
初登場というけど、まぁ新人じゃないんでね(笑)。藤田まことさんやコロッケさんの公演を観客として観にはいっていますし、ずっと一度やりたいなと思っていた劇場です。特に第一部は、コントみたいなお芝居。どこにでもある家族の話なので、共感を持って観ていただけると思いますし、喜んでもらえると思っています。
ずっとやりたかった劇場でやらせてもらえるのは大変ありがたいことだね。多分これ1回になると思うので……いや、成功したら、来年も再来年も開催するかもしれないけどさ(笑)。
僕は個人的に劇場さんにあまりお金を使わせたくない。衣裳にしても何にしても、できる限りお金を使わせない。時代劇にすると、衣裳もカツラも莫大なお金がかかるけど、アットホームな喜劇だったら、なるべくお金をかけないでできるでしょう? だから、衣裳も最初は自前のもので済ますつもりだったんですけど、明治座さんが(吉幾三が演じる安藤万作の)衣裳さんに頼んで用意してくれてさ。衣裳を用意してくれるなら、ギャラをちょっとあげて欲しかったよ(笑)。
ちなみに、セットも簡素です。地方に持っていかないといけないのでね。場面が変わってセットを変えるでしょう? あれも我々が小道具とか手伝って、変えているんですよ(笑)。
と、まぁ楽しくやらせていただいています。7月の開催ですけど、貸切公演もたくさん入ってくださったし、ありがたいことです。一般のお客様もたくさん観にきていただきたいですね。一生懸命やらせていただきたいと思います。大きな舞台としては一番最後なのでね。御園座(2022年3月)、新歌舞伎座(同年6月)、そして、明治座ですから。御園座と新歌舞伎座は稽古だと思え……なんてね(笑)。
吉幾三
ーー吉さんが演じられる安藤万作。吉さんご自身から見て、万作の子煩悩ぶりはどのように感じられますか?
私にも娘が2人いますけど、自分と似ていますよ。娘はやっぱり可愛い。だから、万作のような状況になるのはよく分かる。
……御園座でこの公演をやったときに、思いの外、拍手が少なかったんです。なぜだと思ったら、お客さんみんな、ハンカチで目を抑えている。嗚咽が聞こえたときもありました。同じような状況で生きているお父さんお母さん方が多くいらっしゃるんでしょうね。そうでなくても、親が子どもを思う気持ちは似たようなもんですよ。親と子とは何であるのか、近所とは何であるのか。そんなことを全面に打ち出した本を書いてもらったので、それがきっと伝わったんだろうな。
ーー脚本の中には、感謝の言葉がたくさん書かれていますね。
僕はまず自分たちの子どもや孫に、学校の成績よりもね、言葉として「ありがとう」と「ごめんなさい」をちゃんと言えと言ってきました。「遊びに行くんだ。じゃあ、じいじから小遣い」と言ったら、「はい」と受け取るからさ、「はいじゃねぇよ! ありがとうは!」ってね(笑)。
やっぱり親に感謝する子じゃないといけない。法律みたいにしっかり厳格に生きている親はそうそういないと思うけどさ、親には感謝しなくちゃね。僕自身、9人兄弟の末っ子で、村で一番貧乏した家族だけど、やっぱり親には感謝していますもん。亡くなってしまいましたがね。親が生んでくれないと、今はないわけだから。
僕が芸能生活50周年を迎えられたということも、感謝の一言ですよ。
例えば、社員。社員にいろいろ言うことはあるけどね、感謝しているんです。コロナ禍で何にもしてないけど、ご飯を食べさせてあげなくてはいけないし、お給料を出さなくてはいけない。今までやってきてくれありがとうね。僕も苦しいから、ご飯を食べさせてあげられるか分からないから、去る人は去っていいんだと言ったんだけどね。誰も手を挙げなかった。いい居場所なのかね。感謝しかありませんよ。
もちろん、お客さんやファンの方にも感謝ですよ。中には、お体の不自由な方もいる。今はできないけれど、ステージの最後に僕は握手をするんですね。僕の歌があんまり好きじゃなくてもさ(笑)、劇場だとみんなとつながっている感じがするんだよね。それが今、コロナ禍で一番必要なことじゃないかな、なんて思っています。
自身のヒット曲のほか、世界6カ国の歌を民族衣裳で歌う!?
吉幾三
ーー第二部はどんな構成にされるのですか?
ショーの一部は御園座や新歌舞伎座とは内容を変えます。まぁ変えなくてもできると思うんですけど、変えた方が面白いと思うので、明治座さんでは楽しいものをと考えています。具体的には世界6カ国の歌を民族衣裳を着て歌います。イントロの間に衣裳も全部着替えます。それが一回も成功していないんですけど、皆さん笑ってくださるかなと思って。なんで成功しないのかって、後ろに構えているスタッフが多くてね(笑)。靴下を持って待ったりしているんだ(笑)。自分で履いた方が早いでしょう。
それから「頼り頼られ…」のカップリング曲「天空へ届け」という曲も歌います。これは戦争や争いをやめようという平和の歌なんですけど、去年レコーディングしたんです。そうしたら、今年ウクライナとロシアが大変なことになったでしょう。あえて歌わせていただきます。テレビで戦争の状況を見てしまうとね、まともに歌えなくなってしまいそうですが、どうにかこうにか歌うつもりです。
そのほか、みなさんが知っているヒット曲も何曲か歌います。僕、歌を書きすぎて、歌詞カードみないと歌を歌えないんですよ。「雪國」も「酒よ」もフルコーラスでは無理。『フルコーラス歌えたら1000万円差し上げます』と言われても絶対無理。そんな変な自信はあります(笑)。お客さんには、リクストはしないこと、歌詞を間違っても指をささないこと。そのことを約束してください(笑)。
ーー芸能生活50周年。ご自身としてはどのように感じていらっしゃいますか。あっという間でしたか。
山岡英二という芸名から吉幾三という名前になったときは苦労した記憶がありますけど、自分よりも嫁に苦労させたなと思いますね。みんな「あの時、大変だったじゃん」と言うけど、僕からしてみれば、そんな大した苦労じゃないですね。人に恵まれていたのだと思います。
歌詞にも書いたんですけど、自分は生かされているんだとつくづく思うわけです。最近特に志村さんが亡くなったりしてさ……その分、長く生きなきゃいけないってね、思うんですよ。肺がんになったり、手術をしたりね。とにかく身体中、傷だらけでやってきましたから。
若いうちからのデビューでしたからね。未熟だったなと思うことはあります。でも自分自身、大変な苦労をしたなとは思わない。女房は苦労したと思うけれどね。
ーーここまで走り続ける1番の原動力は?
家族だね。子どもたちが大人になることと、孫が成長していくこと。それが1番の願いですよ。
それから僕は青森と東京を往復する生活をしていたり、いろいろなところに行ったりできる。その地域地域でさ、飲みながらさ、ここは「何川?」とか聞いてね。歌の文句でもなんでもない、川の名前を聞いたりしてさ。ただホテルと市民会館を行ったり来たりじゃなくて、フラフラ飲み歩いて、歩いて行けば、何かあるわけ。そういうことが面白いよね。この仕事をやっていてよかったなと思います。
芸能生活50周年の締め、吉幾三の歌と芝居をぜひ!
吉幾三
ーー今年3月に発売された新曲の「頼り頼られ…」はまさに50周年のキャリアを踏まえた楽曲なのですか。
「人は一人じゃ生きていけない」という言葉と、「生かされている」という言葉は、あとで入れた言葉。自分が思っていることを入れました。3回ほど下血して腸のポリープが破れたり、心臓のペースメーカーを入れたりね。死ぬんじゃないかなと思ったことは何回もあった。歌ももう歌えないと思った。でもこうやって今ここにいるのは、やっぱり生かされているからなんでしょうね。
ーー「人は何でも/欲しがるものさ/何てこと無いものでさえ/俺も昔はそんな思いを持っていたけど/捨てた」。「捨てた」という部分が心に響きました。
欲しいものいっぱいあったのよ。今もないとは言わないけど、もう要らない。お金のことになるけど、全部飲んじゃったのよ。だから女房に通帳もATMも取られちゃってねえ。今、お小遣い制なのね。月々もらっているんだけど、みんなで飲みに行くとなくなっちゃうんだよね(笑)。
人にご馳走になるのが嫌でさ、自分で払っちゃう。それをやめたの、今は。お金があるやつについていくことにしました(笑)。今は欲しいもの何もありません。
ーー観劇を楽しみにされているファンの皆様に一言お願いします!
正直言っていいですか。お芝居と歌で華やかではありませんが、1万2000円ではお安いチケット料だと思います。本当は1万2500円ほしいところです(笑)。トータルで3時間半ぐらいだと思いますけど、明日につながる笑いと涙を全部見せますので、観にきていただきたいです。毎年毎年というのはないと思いますので、吉幾三50年の締めのお芝居と歌を観にきていただきたいなと思います。
取材・文・撮影=五月女菜穂

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