『WONDER BOOK』/LÄ-PPISCH

『WONDER BOOK』/LÄ-PPISCH

“元祖ミクスチャーバンド”の
LÄ-PPISCH初期の
力作『WONDER BOOK』

アルバム『WONDER BOOK』

ご存知のない読者の方に説明すると、LÄ-PPISCHはMAGUMI(Vo)、杉本恭一(Gu)、上田現(Key)、TATSU(Ba)、雪好(Dr)の5名で87年にメジャーデビュー。MAGUMIがメインヴォーカルではあるものの、杉本恭一、上田現もそれぞれヴォーカルを取ることもあり、さらにMAGUMIはトランペットも、上田現はサックスも担当していた。前述の通り、グランジ、オルタナティブにも近い重く激しいロックサウンドを有しており、とにかくライヴパフォーマンスはハイスパートだった。MAGUMI、杉本、上田のフロント3名はステージ上では海老反りジャンプを繰り返すパフォーマンスを見せつつ、管楽器は特に肉体的な疲労がハンパないだろうに(それがプロだと言ってしまえばそこまでなんだけど)歌も演奏もかなりしっかりとしていた印象がある。ボトムを支えるTATSU(Ba)、雪好(Dr)のリズム隊も強固で、ハードなサウンドながら絶妙なグルーブを湛えていたことも忘れられない。

M2「リックサック」の他、へヴィスカとでも言うべきM1「OUR LIFE」やパンクチューンM4「Time Slip」、ハードシャッフルM6「Boy」は辺りの弾けっぷりはどれも素晴らしいが、白眉はM10「胡蝶の夢」。アンサンブルと言うよりも各パートのぶつかり合いと言った方がいい演奏が実にスリリングで、問答無用のロックチューンである。また、アグレッシブなビートだけでなく、ファンク(M3「BAD MAN?」)、レゲエ(M5「爆裂レインコート(胎児の夢)」)、ワルツ(M7「Tears」)とリズムも多彩で、サンバにセカンドラインを加えたM8「BANANA TRIP」という、まさにミクスチャーと呼ぶに相応しいナンバーもあり、実にバラエティーに富んでいる。さらにはM9「ゼゼヒヒのヤマイ」やM11「room」の深めのリバーブからはアシッドロックの匂いも感じられる点も挙げておきたい。捨て曲など一切ない力作である。
《私は繭の中 身を守るレインコート 身に着け ずっと繭の中 身を守るレインコート びしょぬれ》(M5「爆裂レインコート(胎児の夢)」)や、《朝 目が覚めたら オレの顔無い! となりの猫が喰わえてった》(M10「胡蝶の夢」)など、歌詞はまさにサイケデリックな雰囲気のものが多いが、M1「OUR LIFE」)では《BLUEのスーツはおればバッグも持つんです 信号じゃ見なれた顔ばかり モラル片手に Walking You!》《OH! YELLOW YELLOW YELLOW STYLE でも信じてる OUR MY LIFE》と無個性と揶揄されたていた当時の日本社会へのアイロニカルな視点を発揮していたり、《我ラ 我ラ マトモじゃ ないの ほかに 表現はないの》《理解はいらない 理屈もいらない 理由はいらない It’s all right》(M3「BAD MAN?」)とバンドのアイデンティティーを宣言したような内容もあったりと、こちらも多彩だ。この辺はMAGUMI、杉本恭一、上田現という優秀なライターが3名もいたというのが大きいだろう(メインライターは左記3名だが、M9「ゼゼヒヒのヤマイ」は雪好の本名が作詞クレジットに記載されている)。中にはMAGUMI作詞・杉本恭一作曲、あるいはMAGUMI作詞・上田現作曲のナンバーもあり、こういったコラボはバンドのアドバンテージだったと言える。
傍からは順風満帆に見えたバンド活動も、01年の雪好が脱退。さらに02年には上田現が脱退し、05年にバンドは一時活動を余儀なくされた。07年、デビュー20周年の節目に活動を再開したものの、08年に上田現が肺癌のため急逝したことで、メジャーデビュー時のメンバーでの活動は継続できなくなった。しかしながら、それ以後は上田現追悼ライヴ、フェスへの参加など、活動は不定期になったものの、冒頭で述べた通り、LÄ-PPISCHは解散することなく、MAGUMI、杉本恭一、TATSUの3人でその名を守り続けている。

最新のトピックとしてはベストアルバム『LÄ-PPISCH BEST 1987~1997あとのまつり』と、セルフカバーアルバム『caldera』の2タイトルのハイレゾ配信が始まり、それに併せて5月に約2年ぶりとなるワンマンライヴも決まった。この機会に、往年のファンのみならず、リアルタイムで聴いたことがないリスナーにも、偉大なる“元祖ミクスチャーロック”を体験してほしいものだ。

著者:帆苅竜太郎

OKMusic編集部

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