至って自然体な立ち上がりだった。初の武道館ワンマンとはいえ、オープニングから落ち着き払ったプレイを見せながら、田村明浩の歪んだベースソロなどをきっかけにギアを上げていく。すると、まるでホットカーペットが効き始めるようにじわじわと温まりだす場内。スピッツ史上稀に見るマイペースな展開に一瞬とまどいを覚えるも、今回のアリーナツアーがリリースとは無縁の特別な夏祭りであることを思い出すと、この自由奔放な雰囲気とパフォーマンスがとてもしっくりくる。現に、コアファンは序盤にしてすでに恍惚の表情を浮かべている。

　“目の前にあることをひとつずつ越えていったから見れた、最高の景色”。本編終盤に渡邊幸一（Gu&Cho）が言ったこの言葉が、まさにこの日の全てを表している。着々と、しかし確実に次へのステップに進み続けている彼ら。オーディエンスとバンドが全力でぶつかる定番曲はもちろんのこと、“懐かしい曲を”と言って始まった「少年」まで、イントロが鳴るたびに歓声が沸き上がり、躍動感あふれる展開を繰り広げた。全国7カ所を回ってきたツアー最終日のこの日、アニメ『ドラゴンボール改』のエンディングテーマ「拝啓、ツラツストラ」での、7つのドラゴンボールが客席の頭上を飛び交うという光景は圧巻。そんな大合唱を巻き起こす鮮やかなパフォーマンスはもちろん、ライヴ全体を通して、この空間を全員で共有しているからこそ心に響くメッセージがあった。

　“We are the Girls Band!!!!!”と掲げられた、たんこぶちん第2章の始まりとなるライヴ。メンバーが代わる代わるヴォーカルをとったりと、ファンには嬉しい遊び心いっぱいの、このイベントのために作られた新曲「We are the Girls Band !!!!!」をはじめ、「カラフルスニーカー」「ドレミFUN LIFE」など、ガールズロックバンドならではのキュートさ、元気さで一気に会場を活気付ける。MADOKA（Vo＆Gu）がアコギに持ち替えた「夏の日」は切なげで、でもどこか懐かしさと温かさを感じさせ、続く「ヒカリ」では等身大の彼女たちが垣間見えた。コール＆レスポンスを繰り広げた「We Gonna ROCK」は《ROCKしたい》と歌う通り、ありったけの力で、熱気がうずまくパワフルな演奏を観せる。そして「シアワセタランチュラ」では“みんなシアワセー!?”と元気いっぱいに投げかけた。

今年1月には初の日本武道館公演を敢行。30周年記念イヤーにますます活気づく怒髪天が、3枚組記念ベスト『問答無用セレクション“金賞”』をリリース。生きるヒントや名言満載、増子直純（Vo）の金言の数々を聞け！ 取材：フジジュン

　《僕らは今でも大きな音を出していて　それを誰か笑えるかい》と歌う「theme of us」が1曲目を飾る最新アルバム『Drums,Bass,2（to）Guitars』。バンドを表したタイトルはもちろん、その中で鳴っている音そのものが現在のcinema staffの高いテンション感を物語っていた。そんなアルバムを引っ提げたツアーのファイナル。1曲目「dawnrider」のイントロダクションで辻 友貴（Gu）が搔き鳴らすリフに他のメンバーの音が乗った瞬間、バンド内に緊張感が走り、それが客席の高揚感へと飛び火する…そのシーンに鳥肌が立った。そこから一気に加速していく、メンバー＆観客のボルテージ。いつものこととはいえ、全身を使って演奏する辻は3曲目にして寝そべってプレイしている。序盤にして場内に立ち込めているのが、スモークなのか熱気なのが分からない状態だ。

テレビ番組『新堂本兄弟』のバンドメンバーとしても活躍するシシド・カフカが、新曲「ダメかしら？」を配信リリース。ヴィンテージ楽器を使ったこだわりのサウンドによる、新しい夏のナンバーが生まれた。 取材：榑林史章

結成12周年を迎えるLACCO TOWERが、フルアルバム『狂想演奏家』をリリース。自らを“狂想演奏家”を名乗ってきた彼らにとってまさにセルフタイトルとも言える今作には、今まで以上の熱や想いがこもっていることは間違いない。 取材：高良美咲

　初ワンマンツアーの最終公演！…それだけで十分に期待感が煽られた。全国各地を回ってきたことによって、バンドの勢いに拍車がかかっていることは想像に容易い。それは現実のものとなって、初っぱなから凄まじい光景が目の前に広がっていた。パンクやハードロックをDNAに持つテンションの高いナンバーでもって、みるみる場内の熱気を上昇させていくさまは圧巻で、後方の関係者エリアに居ても高揚感が掻き立てられるほど。また、客席のノリが変わったというか、観客がKNOCK OUT MONKEYの音楽の受け止め方を心得ていたことも印象深い。感情の全てを音に込めてプレイするバンドと、その音を全身で楽しむ観客。そこに爆発的な盛り上がりが生まれるのは当然のことだろう。そして、バンドを成長させるのが、ライヴであり、観客であることも改めて実感した。

　4月にリリースした初のミニアルバム『ケラケラリアット』を引っ提げ、全国13カ所を回ったツアーのファイナル。お揃いのさわやかな水色の衣装に身を包んで登場したメンバーは終始笑顔。“音楽のケラケラリアットを食らわしていく”と、キュートさもありつつ挑戦的でアグレッシブな楽曲を初っぱなからぶつけていく。そして、背中を押してくれるような「夢コンシェルジュ」、MEMEの力強い歌い出しが印象的だった「さよなら大好きだったよ」など、ふるっぺ（Ba）、森さん（Dr）とサポートメンバーのどっしり構えた演奏に乗せた、心に響くメッセージソングで会場を魅了する。そんな中、デビュー前の路上ライヴなど下積み時代の話しをしながら、人であふれた会場を見渡して、“不思議な嬉しい気持ち”とMEMEが語ると、温かい拍手に包まれた。